夏の昼下がり
in海馬邸。

夏休みに突入してからも
多忙な恋人に会いに来た
という訳だけどさ…

「なんか物足りねぇなぁ…」

「押しかけておきながら
不満があるというのか?」

海馬に少し睨まれる。

「いやいや海馬といるのに不満があるんじゃ
なくってさ
夏なのに いつも通り
なのは物足りないってこと」

「駄犬らしく
走ってきてはどうだ」

「熱中症で死ぬから」

「貴様ならいけるな」

「何だよその変な期待」

「ではどうしようと
いうのだ」

「じゃあ、いっちょ昼から
ベッドへg…」

「頭に風穴を
開けてやろうか」

うわ、藪蛇だ

「嘘です 遠慮します」

「ふん」

「正直な話さ 海馬ん家
一周しねぇ?」

「何を言うかと思えば…」

そう言って呆れ顔に
なる海馬。

「ほら、隠し部屋とか
見つかるかもしれねぇだろ」

「あわよくば
非ィ科学的なモノも、な」

海馬が、にやっと
怪しい笑い方をした。

「な、何だよそれ」

「俺は信じてなどないから良いが、貴様は
怖じ気づくかもしれんな」

「この城之内様がそんな物
怖がる訳ねぇだろ!」

「ならばやるとするか」

「おっし!やってやろう
じゃねぇか!」

という訳で始まった
海馬邸散策。
始まって早くも1時間が
経ったものの特に
これといった物は
見つかっていない。

「なぁ なんか見つけた?」

「いや 特に見つけていないぞ」

「なんだよ つまらねぇな」

「うるさい 文句を言うな」

屋敷の中で
わざわざ携帯使って
現状を教えあう。
(無線機なら、もっと
らしくなったのになぁ)
と思いつつも
散策を続ける。

「じゃあ切るぞ」

その後プツッと通話が
切られた。

「なーんか面白い物でも
ないか……おっ」

一つだけ扉の違う部屋が
あった。
大きくて、綺麗な彫刻が
入った立派な扉。

取りあえずノックをして
誰もいないことを確認して
から部屋に入った。

「すげぇ…!」

書斎なんだろうか
大きな本棚があって
部屋の奥には机が、
そして手前には
高そうなソファーが
ガラスのテーブルを
挟んで2つある。
勿論 絨毯も高級感のある
ものだ。
俺はすぐ海馬に電話をかけた。

「海馬!すげぇ豪華な部屋
見つけたぜ!」

「貴様の感覚からすると
この屋敷の部屋全てが豪華
なのではないか?」

「うるせぇな 本当に
すげぇ部屋なんだって」

「ほう どんなだ?」

「まず扉がすごいんだよ
綺麗な彫刻が入っててさ」

「…彫刻だと?」

俺は本棚にもたれた。

「でかい本棚があってさ
もたれても安心で…っ!」

体重をかけた途端に
本棚がずれ、俺は倒れた。
倒れた衝撃で通話を切って
しまった。

「ってぇ…何なんだよ一体」

起き上がると目の前には
壁紙の色に合わせてある
ドアがあった。

(隠し部屋か…
もしかして金庫とかか?)

ドアを開けると

「…なんだよ、ここ…」

狭い部屋には
ベッドとその横の棚
しか無かった。
おかしいのは
ベッドに付いている
手枷。
まさかと思って
引き出しを開けようと
した瞬間

「触るな!!」

突然の怒鳴り声で
俺は止まった。

「海馬 ここ」

「黙れ!さっさと出ろ」

言われた通りに
俺はその部屋を出た。
部屋を出た途端
海馬は思いきりドアを
閉めた。
海馬は、微かに震えていた。
そんな海馬を
そっと抱きしめた。

「海馬、」

「何故…よりによって
ここに…」

理由が余りにも軽率だった
から答えることも
できなかった。

「はっ、はあっ、っ ひっ」

「海馬 大丈夫だ」

「あ…あぁっ、あ」

「大丈夫 ここには
俺と海馬しかいないから」

過去のトラウマのせいだろう。
海馬はごく稀に過呼吸を
起こす。
いつもの海馬に慣れている
からか、この時の海馬は
ひどく か弱く思えた。

あの部屋で幼い海馬は
どれほど耐えたのだろう。
あの様子では部屋の
使い道は一つだったに
違いない。

海馬を抱きしめて背中を
さすり 落ち着かせながら
俺は考えた


「もう この部屋は
完全に封鎖する」

「ああ そうしたらいい
と思うぜ」

「…みっともない所を
見せてしまったな」

「みっともないなんて
ことねぇよ、普通だ」

「ふっ…凡骨に
励まされるとはな」

「素直に喜べよな」

「ふん」

しっかりと手を繋いで
海馬の部屋へ向かう。

「城之内」

「どうした?」

「…今日は、泊まれ」

「分かった」

陰まで包んで
照らしてあげたい
心からそう思った。

(それができるのは
俺だけだから)




社長に暗い過去があったら
というお話
意外に弱かったりしたら
いいかなぁと思って
過呼吸設定しちゃいました
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