「かっいっば〜☆」

隣で駄犬が騒いでいる。
なんだその甘ったるい呼び方は!
と言いたくなる呼び方で俺を呼んでいる。

「何だ さっさと言えそして黙れ」

「なんでそんな言い方すんだよ!」

「騒がしいからだ」

「俺は明日が楽しみなだけなのによ」

「明日が何なのだ」

「俺と海馬の休みの日だろ!」

…あぁ そうだった
そういえばそうだった

「…そうだったな」

「2週間ぶりに
会えるんだからさ、
もっと『楽しみだなぁ わーい』とか
喜べよ」

「それは貴様だけだ」

言った後で少し沈黙が
訪れる。


(つっけんどんな言い方だな)

そこで俺はちょっと演技をして復讐する
ことにした。

「海馬は嫌なのかよ」


やってしまった。
凡骨の声色が暗くなって、

「違…」

「ま そうだよな
いつも鬱陶しそうだもんな」

さっきまで笑顔だったのが
嘘のように怖いほど
冷たい目をしている。

「ならいいぜ別に
俺 海馬と会うのやめるから」

「凡骨」

「一人で寂しがってれば?」

冷たい笑顔を俺に向けた後
城之内が立ち上がると
俺は ほぼ反射的に
城之内に抱きついていた。

「違う、違うのだ」

演技成功!

「何が?」

演技をもうちょい続行してみよう。

「会うのが嬉しいのは貴様だけだ
という意味ではなくて…」

「何なんだよ」

「その、俺はそんな喜び方を
しないからそれは貴様だけだと
言いたかったのだ
貴様に会うのが嬉しくない、
という意味ではない」

嬉しくない訳がない…と
顔が熱くなるのを自覚しつつ
小声で付け足す。

「だろうな♪」

演技解除。我ながら演技の効果は絶大だなぁ
と感心した。

「…は?」

「やっぱ海馬 何だかんだ言って嬉しいんじゃん」

「…ふん///」

「やっと本音聞けたし
嬉しいって最初っから言えよ
バカイバ」

「図に乗るな 凡骨が」

「けどさ 海馬本気で俺が
怒ったと思っただろ」

「あれだけの表情をしていれば誰だって怒ったと思うだろう」

「俺 以外と演技の才能あるかも(笑)」

…あれを演技と言うのか?

「ちょっとは素直になってくれよ?
俺 心にもないこと言いたくねぇし」

「善処するが それなら貴様も調子に
乗って冷やかすのを止めろ」

「えぇ〜」

「何が『えぇ〜』だこの馬鹿が!
俺の恥ずかしさも考えてみろ!」

「恥ずかしさ4割、嬉しいの6割だろ?」

「うるさい!///」

「赤くなってるぜ?」

「うるさいうるさい!////」

「照れちゃって…可愛いぜ海馬ぁ!」

「黙れぇえ!抱きつくな暑苦しい!!////」

「明日完全オフなんだよな?」

「そうに決まっているだろう」

「なら良いよなー?」

寝室に向かうべく海馬を抱えあげる。

「なっ、ま、待て!//」

「なんだよ?」

「まだ書類が残っている それに今日は
これから会議があるのだ」

「そんなに仕事があるのか…」

「ああ…すまない」

「海馬が謝ることじゃねぇよ 仕事が
終わるまで待ってるよ」

「海馬の仕事があるにしろ無いにしろ
どっちみち泊まる予定だったしな」
と付け足すと海馬は少し赤くなった。

「もうすぐ会議だ、着替えねばならん」

「会議 上手くいくといいな」

「失敗などするわけがないだろう」

「確かにそうだな」

高校生で社長やってて、人並み外れた恋愛してて、その2つを両立してるんだしな。会議なんて慣れっこだろうし。

「行ってくる」

「頑張れよ」

頷いて部屋を出ようとする海馬に
耳打ちする。

「夜の分の体力 温存しとけよ」

「ふっ 言われずとも分かっている」

軽く微笑んでから触れるだけの軽いキスをして海馬は部屋を後にした。

冷淡で恥ずかしがりな恋人には、
たまには演技が特効薬になるらしい。

(終)

若干城之内に執着してる社長に復讐してみた城之内という話にしてみました。


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