(あ、まだ明るい)

バイト先へ向かう道の途中で、
ふと まだ空が明るいことに気がついた。
ついこの前までは既に暗かった時間帯の
空の違いに季節の流れってのを感じて
春になったんだなと思った。


とはいえ、まだまだ春の初めらしい。

「寒ぃ〜! まだ気温低いなぁ…」

暖かい日があるようにはなったものの、
寒い日の頻度が高い。
冷たい向かい風に対抗しつつ
一刻も早く帰るため全力で自転車をこぐ。

家までもうすぐの所で近くの公園にある
桜の木が見えた。その小さい公園には
古い五本の桜が植えられていて、
満開になるとお花見する人でにぎわう
ちょっとしたお花見スポットになって
いる。

(あいつと満開の桜の中でお花見、なんて
してぇなぁ…)

桜も綺麗だろうけど、お花見してる中での海馬の笑顔も綺麗だろう。

そんなことを考えていると家に着いた。
時計を見ると10時を
少し過ぎたくらいだった。
携帯を取り出し、海馬が寝てしまう前に
お花見の誘いをするべく電話をかけた。

まだまだ桜が満開になるには時間が掛かるだろうけど、早めに誘っといた方が良いだろうしな。

プルルル…とコール音が鳴り続けている。

(出ないな…寝ちまったか?)

諦めて電話を切ろうとした時、
不機嫌そうな声で海馬が電話に出た。

「…何の用だ」

「よっ お疲れさん」

「早く用を言え」

「はいはい 海馬と一緒にお花見行きたいなって思ってさ、その誘い」

「花見なら毎年モクバや社員達、取引先の人間と共にしているが」

してたら来ないってか!?
さらりと言った態度にカチンときた。

「それなら来ないか 分かった分かった」

「待て!そうは言っていない」

「なんだよ 行かないって言ってるのと
同じじゃねぇかよ」

「違うと言っているだろう!」

「じゃあ来るんだな!」

「ふん…人の話も聞かずに
勝手に返事を決めるな」

「でもよ、なんでわざわざ来てくれる
わけ?」

「それを聞くのか貴様は!?」

「ああ なんか気になったから」

「そ それは…だな、その…」

海馬がどもってる。
これは聞き出すしかないな(笑)

「何?」

「社員達や取引先の人間との花見と
モクバと共にする花見が違うようにだな、」

「うん」

「…貴様との花見は特別だということだ」

「うわ…それ すげぇ嬉しい」

「『ふーん』等と言って流されたら
狙撃してやろうと思ったぞ」

「流さないって 海馬が赤くなりながら
言ってくれたんだし」

「な…っ 貴様のような凡骨の為に赤面して堪るか」

「やだー また海馬君ったら
恥ずかしがっちゃってー」

「気色悪さを自覚しろ」

「ふざけただけだって」

「凡骨…俺は もう寝るぞ」

「ああ ゆっくり休めよ」

「ん…」

プツッという音を最後に電話は切れた。

(特別な花見、か)

海馬とする花見は俺と海馬の2人にとって特別な時間、特別な思い出になると思うと春から遠い寒さも気にならなくなる。

「おやすみ海馬…」

満開の桜の前に、夢で会いたいなぁなんて考えながら俺は眠りについた。

(遠い程楽しみになるよな!)

(終)

早い春の話を書きたくなって書きました。
満開シーズンになったら
お花見話を書こうと思います。

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