ひゅううう…


「う〜…寒ぃ!」

新聞配達を終え、
学校に向かう道の途中。

もう12月も中頃に入った
朝の北風に吹かれて
マフラーを巻いた首は
まだ良いものの
無防備な両手は
感覚が無くなってしまった。

(だから冬の新聞配達って
嫌なんだよ…)

手をポケットに突っ込むと
ほのかな暖かさで
少し感覚が戻ってきた。


学校に着く頃には、
また感覚が無くなる程
手は冷えてしまっていた。

下駄箱を見ると俺より早く来ている奴が久しぶりにいることに気付いた。

「海馬…珍しく今日は来てるんだ」




教室の戸を開けると、
海馬がこっちを向いた。

「よっ」

「…凡骨か」

「何だよ その嫌そうな言い方」

「嫌ではない
ただ意外なだけだ」

「何がだよ?」

「貴様が こんな早い時間に登校することがだ
毎朝 間抜けな顔で
ギリギリまで寝ているイメージしか無いのでな」

「俺だって毎朝毎朝 頑張って新聞配達してるんだよ」

何も入っていない状態に近い鞄を机に置く。

「貴様、手が冷たいのか」

「まぁな なんで分かったんだよ?」

「貴様の手が霜焼けで真っ赤だからだ」

「海馬の顔みたいだよな」

「黙れ」

海馬が俺の手を握る。

「…氷の様だな」

「海馬の手、暖けぇ〜…」

「貴様の手が冷た過ぎるだけだ」

「そっか」

それから暫く
海馬は俺の手を握り続けてくれた。

「今日の海馬はサービス良いな(笑)」

「たまには こうしてやる時もある////」

「いつもでも良いけど…って 海馬赤くなってるぜ」

「いちいち言うな」

「それくらい分かってる、ってか?」

「ふぅん…そういうことだ」

気がつくと手は暖まっていた。

「海馬 暖めてくれてありがとな」

そう言うと海馬は手を離した。
けど それだけでは終わらなかった。

「受け取れ」

無愛想に突き出された それは、茶色い手袋だった。

「手袋じゃねぇか!
これで朝でも手が冷えなくなるぜ!」

「いつも随分寒そうだったからな…それに」

「それに?」

「毎日は 今みたいに
貴様の手を暖めてやることは出来ないのでな
せめて それ位は…///」

顔を ぽっと赤らめて
話す姿が可愛すぎる。
こんなに海馬が素直なのは
久しぶりだ。

「今日から海馬 デレ期に突入?」

「何だその変な期間は?」

「ツンデレの奴がツンっとしなくなる期k…」

「馬鹿げた事を言うな!
人が親切にしてやったら
調子に乗りおって…!」

「そんな怒るなって(汗)」

この間わずか10分足らず。
けど 俺には長い長い
とても暖かい時間に感じられた。



(海馬もそうだろ?)
(……ふぅん)



(終)


社長のデレ話に
してみました。
甘ーーーい!!!(古いよ!)
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