「今日、集まってもらったのは他でもない」

土方さんが、刀を縦に畳につき柄の部分に両手をついて私たちを睨みながらそう言った。

鬼の副長のその威圧感に、睨まれた隊士はゴクリと生唾を飲む。
私もその一人だった。

これから、このおっかないお方はなんと申すのか…二言目には切腹の土方さんの事だから、きっと今日も叱られて仕置きが下されるのだろうと思って覚悟をした。

土方さんが、ゆっくりと体制をたて直し刀をを振り上げた。
煙草の煙が不吉にユラユラと部屋を昇っていく。

ついに、鬼の副長が口を開く。
私たちは、目を瞑る。


「テメーら…」

誰かが小さくヒィッと言ったのが聞こえた。

私も心の中でそう呟いていた。


「屯所汚くしすぎなんだぁぁぁっ!!!」


その予想と大きく外れた言葉に、私たちはついハッ?と口々にした。


「ハッ?じゃねぇぇぇ!!!」

刀を勢い良く、畳に振りかざした。
バァンッと部屋に破壊音が響いた。


「オメーらはいいかもしんねーけど俺からしてみたら、これ程ない苦痛なんだよぉぉぉっ!!」


そこで、空かさずそーごが立ち上がった。


「土方さん、俺もそれは賛成です。一刻も早く汚れを一滴も残さずにおとしましょう」


「お…おう」


いつもからは、予想できないようなそーごの素直な反応に土方さんに限らず隊士は皆そして近藤さんまでもが、気味の悪そうな顔でそーごを見ている。

しかし、私は違った。

この先の、そーごの行動が読めた。


「土方さん、逃げたほうがいいですよ」

「菜々?」

土方さんが不思議そうに私を見た。

そんな土方さんを見て、そーごはニヤッと笑った。
刀を腰かた抜いた。


「という訳で、手始めに一番の汚れである土方さんに消えてもらいやす」


そーごは躊躇なく土方さんに襲いかかった。


「うおぉぉぉぉっ!!??」

土方さんの叫び声が、いつものように屯所に響き渡った。





大掃除


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