それも一つの愛……?
「阿伏兎さんっ!!」
「…………何だ。」
「どうやったら団長を振り向かせれますか?」
食堂でいつものように飯を食ってると、団長に惚れこんで入団した夜兎族の……菜々が近づいてきて開口一番がコレだった。
……またか…
そう思うと溜息がでた。
「いい加減、諦めたらどうだ?時間の無駄だぜ?」
奴には恋愛の《れ》の字すらしらねーんじゃないかと思うほど戦闘にしか興味がない。
いやいや、俺だって出来る事なら応援してやりてーよ?
「そんな事ないですっ!!団長、いつも私に戦いのお誘いをして下さいます!!」
「………それでお前さん、何回死にかけた?」
そういってやると言葉に詰まる菜々。
俺だってこんな事言いたかねーんだ。
「で、でも!まだ死んでません!」
「…まぁ、菜々はそこそこ強ェしな……」
…ま、もしかしたらわざと生かしてるのかもしれねーな。………団長にしては珍しく。
「団長と一緒にいれるなら本望です!たとえ、殺されたって……!!」
オイオイ、まじかよ……
「はぁ………」
「何?どうしたの?二人とも。」
恥じらいながらそう言う菜々に本日二回目の溜息をつくと、話題の中心人物が現れた。
「おい、団長。どーにかしてやれよ。」
報われないのは可哀相だ。
故郷にいた時から菜々を知ってるだけに心苦しいものがある。
少しでも進展があれば…と願う俺はきっと柄じゃねーな。
「何を?」
そうきく団長に無言で、俺の横に顔を赤くして立っている名前をちらっとみると、団長はあぁ、と呟いた。
「で?」
いや、で?って…………はぁ…本日三回目の溜息。
これで俺の幸せがどれだけ飛んでいったのだろうか……
「分かってんだったら応えてやれってんだ。」
「応えてやれって言われてもなー………俺、そういうの興味ないし。」
あ、やべぇ……菜々の目が……
「でも、菜々は強いからね。んー………………あ、ちょうどいいや。菜々に俺の子供産んでもらおうかな。きっと強い子供ができるよね。」
「ちょ、団長!?…それって…」
バタンっ!
ニコニコ笑いながら言った団長の言葉に机から身を乗り出して言いかけると、隣から聞こえた大きな音。
見てみると、目をまわして倒れている……
「菜々っ!!オイッ!大丈夫かっ!!!?」
「だ、団長が………子供…私……が………」
倒れた菜々を起こして肩をゆすると、意識がどこかに飛んだように呟いていた。
「あはは、倒れちゃったね。あ、阿伏兎、ちゃんと菜々を医務室に連れていってね。俺の子供を産む大事な体だからさ、何かあったら困るだろ?」
いつのまにか机いっぱいの飯を目の前にいつもの顔でサラリと言う団長に本日四回目…か………とりあえず、溜息をついた。
そして、菜々に目を向き直すと、どうやら最後の言葉が効いたらしい………完全に気絶していた。
オイオイ、この先が心配になってきた………
これ以上の面倒は勘弁してくれ………
それも一つの愛……?
((だ、団長のこここどっ…………))
((んー、近いうちに子作りしないとなー))
((はあ、……この保護者ポジション卒業してェ…))
フリーリクエストを下さったkadaf様へ感謝を込めて…
2009.July.21 〆cherrybe
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