もしヒロインから告白していたら(第1話)
今日で真選組の仕事は終わり。
明日からは総悟くんの姿、見られないんだな。
ふぅ、とつい溜め息を吐いてしまうと、返却作業をしている同僚に心配されてしまった。
「ごめんなさい。手伝うって言っておきながら…」
総悟くんの事は、もう考えないようにしよう。
だって、総悟くんはまだ18歳。四捨五入したら30歳の私に好かれても迷惑なだけだろうし。ううん、それどころか引かれるよね。
「紫亜さん」
ふいに呼ばれた声に振り返れば、私の心臓を高鳴らせる存在の人が。
ああ…駄目だ、やっぱり…。
「…………」
「……マジですかィ?」
「え?」
総悟くんの言葉の意図が分からず、首を傾げた。
「…なんだ、嘘…か。そーだよなァ…俺みたいな子供、相手にする訳ねェよな…」
「へ!?え!?何、私、何か言ったの!?」
総悟くんの悲しそうな姿に胸が痛むし、自分は何かを言ってたのか?という疑問にあたふたする。
それに見かねたのか、今度は同僚が溜め息を吐いた。
「何、無意識だったの?今、「総悟くん、大好き」って言ってたわよ」
……………………。
「嘘ォォォォォ!?」
言わないつもりだったのに!!諦めるつもりだったのに!!無意識って怖っ!!
じゃ、なくて!!
真っ赤な顔で、総悟くんに振り返ってみると、真っ直ぐ見つめられていた。
「…気持ちが嘘じゃねーなら、もう一回言って貰えやすか?」
真剣な眼差し。駄目よ、こんなかっこいい姿見せられたら、歯止めがきかない。
「総悟くんが大好き。…年上で7つも離れてるけど、総悟くんの恋人になりたい…です…」
「俺も、紫亜さんが大好きでたまらないんでさァ。ガキで頼りねェかもしれねーけど、恋人になって下さい」
すぐ返った言葉が嬉しくて嬉しくて、なんだか気持ちがふわふわする。
「その続きは余所でやってちょーだいね」
同僚の冷めた声に、一気に我に返った。
「ご、ごめんなさい!!」
慌てて手伝いに戻ろうとしたが、
「じゃ、余所でしてきやーす」
と、総悟くんが私の手を掴んで駆け出す。
「総悟くん!?」
仕事に戻らせて、と言いたかったが、総悟くんの嬉しそうな笑顔を見て、私もつい笑顔を返した。
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