ヒロインがバツイチ子持ちだったら(第1話)
諦めよう、と思っていた相手から、まさかの告白。
嬉しい。凄く嬉しいけど、私はまだ話していない事がある。
「総悟くん、気持ちは凄く嬉しい。けど…総悟くんはまだ18歳でしょう?20代半ばの私なんかより、もっと良い人いるわ」
「紫亜さん以上に、良い人なんかいねェ。俺ァ紫亜さんだから、紫亜さんが好きなんでィ。紫亜さん以外の女なんか考えられやせん」
「総悟くん…」
真剣な瞳。土方さん相手にふざけている時とは全然違う。
私の胸は高鳴るばかり。でも、ちゃんと言わなきゃ。
「あの、総悟くん。私、私ね…バツイチなの」
「そうなんですかィ?俺と会う前に独り者に戻っといて良かったでさァ。不倫にならずにすみやしたからね」
バツイチと聞いても臆した様子は無い。けど、本題はこれから。
「子供が1人いるの」
「……」
やっぱり、これには驚いたみたいで、目が丸くなった。
「子供、何歳?」
「え、まだ1歳…」
「そうですかィ。じゃあ、結婚してくだせェ」
「いきなり!?」
お付き合いの部分はすっ飛ばされ、突然プロポーズ。
今度は私が驚く番だった。
「子供が何も分かってない内に結婚しといた方が、俺を父と呼びやすいだろィ。本当の父親の事は、大人になってから話せばいい。それに紫亜さん1人より、2人で育てる方が負担は軽いってもんでさァ」
「で、でも…総悟くんの子供じゃないのに…十代のうちから、そんな苦労しなくても…」
「紫亜さんが産んだ子なんだろィ?なら無条件で可愛がるに決まってまさァ。紫亜さんと一緒なら、幸せは感じこそすれ、苦労なんて思いやせんね。…それとも、俺とは結婚したくない?付き合いたくもない?もしそうなら…諦めやす」
総悟くんの悲しそうな顔を見て、私はつい慌てて首を横に振った。振った後に、しまった、と思ったけどもう遅い。
総悟くんの表情が明るくなり、私に抱き付いてきた。
「嫌じゃない、って事は結婚してくれやすよね?」
総悟くんが好きだから、だからこそ苦労させるような事、させたくなかったのに。
こんな風に優しい温もりに触れてしまったら、もう断れない。
「私…結構、我が儘よ?家じゃ、だらしないとこもあるし、そのわりには口うるさいし…本当に私でいいの?」
「紫亜さんじゃなきゃ、ダメなんでィ。前の旦那より、ずっと幸せにしてやりやすから、覚悟してくだせェよ」
耳元で、総悟くんの嬉しそうな声が囁かれる。
…たったこれだけの事でも、私は幸せでいっぱいになった。
=終=
2013/01/31
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