「夜にピクニック…?」

ここ藤城学園は、独自の行事が大量に存在する。
その中で今回もなかなかぶっ飛んだイベントであった、夜にピクニックを行うというもの。
聞けば、その行事は生徒の親睦を深めるものであるとかそうでないとか。
別に親睦を深めるなら昼でもよい気がするが…夜に行うというのはまあ確かに粋であるのかもしれない。

「向井先生は久しぶりの夜ピクニックだね、懐かしいなあ昔の向井先生と言ったら」
「ちょ、一ノ瀬先生昔の話はナシです!」
「ほほう、後で詳しく聞きたいところですね向井先生」

実はと言えばそうなるのだが、向井先生はこの藤城の卒業生らしい。
だからというべきか、彼はこの藤城の行事に疑問も抱かず行えるのだろう。
向井先生曰く夜ピクニックはそこまでおかしな行事でもないらしい。
なんでも、お正月には藤城一同で豆撒きを行うとか…ここは高校のはずだけど。

「それじゃ、僕達は各自チェックポイントに行こうか…柏木先生はこの場所で平気かな?」
「あ、はい!大丈夫です」
「なら行くぞ、そろそろスタートの時間だ」

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「あっ柏木先生!」

夜だというのに元気な声が森林に響く。
彼は遊馬くん、私の担当するクラスの子ではないがとにかくスポーツ面で有名なので聞いたことはある。

「わあ…遊馬くんったらそのラケットケースは一体…」
「ここらでバドやろうと思ったんですよ!先生もどう?」
「バドやる!ふふ、これでも私高校時代はバド部だったのよ〜」

久しぶりに腕が鳴る。
といっても相手は遊馬くんだし、ここは足場も不安定だから本気ではできないけれど。

「お、おお…!先生めっちゃ上手!」
「遊馬くんには負けるよ、…はいっ!」

少しばかり熱中してしまったのだろうか。
私はチェックポイントの係だというのに気づけば私と遊馬くんのゲームを眺める藤城の生徒がちらほら。
ふふ、真山先生にバレたら怒られるなこれ…。

「先生何してんっすか」
「あ〜いや、つい熱中しちゃってね…他の先生には秘密ね?遊馬くんもありがとう!楽しかったー!」
「いやー、先生が相手してくれて俺もすごい楽しかったし!今度テニス部の試合見に来てくださいよ!」

生徒同士の親睦を深めるのが今回の行事の目的らしいけれど、私も私で少しは生徒達と仲良くなれたかなあなんて。
よし、今度遊馬くんの試合見に行ってみよう…!


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06/16
ただバドがしたかっただけなんだ

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