「時間経ったしちょうどいいかな…」
「何か御用があったのですか?とミサカはあなたに問い掛けます」
「まあ何と言うか押しかけに行こうかと」
「…あなたの押しかけに行く相手がとてもかわいそうです、とミサカは見知らぬ相手に同情します」

あんたの姉さんなんだけどね、と言おうとしたが口を閉ざす。
この妹にとって、姉という存在は普通の姉妹とは違い特別なものである。
勿論本物の姉妹である訳ではないが、下手に口出ししていいものとは思えなかった。
時は昼過ぎ、姉である美琴も一旦寮に戻っていると良いのだが。

…とりあえず一度寮に連絡しておけば、後でコンタクトも取りやすいはず。

そして常盤台寮、美琴の部屋と聞いた場所のインターホンをそっと押した。

「はい、白井ですの」
「げっ白井ってもしかして『風紀委員』の白井ちゃん…?」
「…その失礼な態度は檸絽さんですの?」
「うわー、そういや御坂ちゃんのルームメイトって白井ちゃんなんだっけ…」

失敗したと思いながらとりあえず許可が出たので美琴と黒子の部屋へと入っていく。
途中何人かの生徒に会ったが、流石名門常盤台生と言うべきか彼女たちはみんな礼儀正しく外部の人間である楓にも挨拶を欠かさなかった。

「失礼するよー」
「あなたがここに来ることが既に失礼極まりないんですのよ」
「いや白井ちゃんは手厳しいねえ」

彼女白井黒子は学園都市の治安維持団体『風紀委員』に所属している。
そのため楓がスキルアウトたちを返り討ちにしている場面を何度か見られ、挙げ句の果てには支部まで連行されそうなことも多々あった。

「…本当ならあなたを今すぐ連行したいところですけれど、何かお姉様に用があるのでしょう?」
「その通り、短絡的に言うと『お姉様』に用があるんだよ」
「…貴女に言って解決するかはわかりませんが。お姉様、最近は無断外泊を続けているんです、昼もこの通り出かけていらっしゃいますし、…でも私には何の相談もしてくれませんのよ」

黒子は自身の感情をぽつりと呟き、ベッド(美琴の)に寝転んだ。
全部ではないが、美琴が外で何をしているかを知ってしまっている楓は何を言っていいのかとても難しいところで、結局言えることは大したことではなかった。

「まあ、御坂ちゃんは白井ちゃんに、迷惑かけないようにしてるんだろうけど」
「…それはそうかもしれませんが、迷惑でも何でも、私に頼っていただきたいんです。私はお姉様のそういう存在になりたいんですの。」

黒子が前から美琴に心酔しているのは『風紀委員』で世話になった時度々聞いたことがあった。
大好きな人のために何かをしたいという美しい感情を持つこの
二人は、互いに違う方向で互いを思っている。
こういう人たちを暗部の世界に落とさないのが楓の望みであったりもするのだが。
暫く黒子の話を聞いていると、乱れた髪型にどことなく傷を負った第三位、御坂美琴がドアを開けた。

Wish or Egotism
(心酔、第二の『妹』)

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03/19
そろそろ終わりそうですね!まだ一通さん出てないけど!

01/19
この頃はもうすぐ終わるなんて希望持ってたんですね(遠い目)
ていうかちょうど10ヶ月ぶりにこの文章みたとかすごい


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