恐怖政治と裁判の死刑囚





ーー俺の目は特別である。
そう言えばまるでSF小説のように劇的な始まり方ではあるが、結論から言えばこんなものはただの不良品で欠落品。人として、見えてはならないものが俺には見える。
それに気づいたのは物心つくまえの事だった。
時にふわふわと浮くように、時にべたべたと絡むように、じぃっと見つめてくるもの手招きするもの多種多様に俺に気付いた。
その事実を、前までは俺の目がおかしいのだと思っていた。しかし、最近気付いたのだ。
正確には俺には奴等が見えていると言うより奴等が俺に見せるのだということを。
文面的には同じことを言っているかのように聞こえるが、それは全く違う。
俺の目がおかしいのはではない。
本来ならば、俺に見えていると言うことは誰に見えたって構わないのだ。しかし奴等は選ぶ。
徹底的に決定的に持たされた本能の差を見極め感じ、そして選ぶ。
俺の目が異端なのではないのだ。
生まれ持った感覚の差。誰にでもある、直感が鋭いか鈍いかのたったそれだけの差を奴等は見分ける術を持っている。
俺にはそれが空寒く感じるのだ。
見えることには慣れきった。生きてる奴がいるのなら死んだ奴がいてもおかしくない。
生きることと死ぬことは永遠の輪なのだから。
それはいい。けれど、奴等が俺を選んだと言う事実が恐ろしい。
テレビで見る霊能者は向こうの話を聞いて解決させることができる。しかし俺には見えるだけ。それが何を意味しているのか考えることが恐ろしい。
しかし俺は少しずつ理解している。
せざるを得なくなっている。
俺は、いずれーーーー。

「、青峰?」
「っ、」

暗い道路の脇、青白い蛍光灯に晒された肌色が映る。
おどろおどろしく透けるような青白さは脳内で再生された明らかな幻影で、ただその事に安堵した。
可笑しな面してんなー、と不思議そうな顔をした火神の、明るく発色する朱色を混ぜる。
不可解そうに首を傾げる仕草に泣きたくなった。
そして首を傾げて傾いた頭の反対側、その肩にうっすら見える奴の姿。
気持ちの悪い青白さに目を細めて、なのに俺にはどうすることもできないのだ。
何度歯痒くて痛ましいんだろうか。何故、俺さえこいつの傍に居なければこうなることもなかった筈なのに。
奴等が俺を選んだと言う事は自然、俺のもとに集まってきてしまうのが結果だった。
今までだって、何度俺のせいで張り付いてしまった奴の姿を見てきたんだろう。
そのどれも実害は無かったけれど、ただ悲しくて辛い。その姿を見るたびに心臓が跳ねて汗が吹き出た。
どうして俺じゃないんだろう。
俺の出した結論が正しいのなら、どうしてわざわざ俺に害を与えないのだろう。
手を伸ばしてそのまだ明るい肌色に触れる。
びくついた体を抱き寄せて名前を呟いた。
光を絶って恨む。
こんな本能いらなかった。選ばれなどしたくなかった。きっと俺以上なんてどこにだっているのに。
恐ろしい。そう思う度に背筋が震えた。
見えることが怖くて選ばれたことが恐くて失うことが怖くて、死が恐くて。
まだ生きてる俺はこいつはいずれ死ぬのだとしてきっとこいつは晴れやかに死ねるだろう。
そう思うことで誤魔化す俺の気持ちなど知らなくていい。
選ばれたのが俺なのならば、お前のそいつらも全て引き受けて死んで見せるから。
だから、恐くて怖くて情けない俺を、今だけせめてその脳裏に叩き付けて。
死んでしまっても忘れないでいて。


恐怖政治と裁判の死刑囚

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初っぱなからフィーリングだけのよくわからない文章をぶちかましております、思想理です。
怖い話を書くに当たりまずは怖いの基本概念と言うものを考えてみようと言うことで、見える側からの怖い話を書きました。
さぁ皆様こんな怖いの定義を吐き間違えた駄文など忘れて、きっと次の作品は夏に相応しい怖い話を書いてくれることでしょう。
さて前口上はここまでに、次からの作品をお楽しみください。










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