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――かすがちゃんが上杉に帰ってから数日が経った。
あの日以来、どこか佐助さんの様子がおかしい。
妙にスキンシップが多くなってきたし、一歩間違えればセクハラ紛いのこともしてくる。
もっとおかしいところをあげれば、悪態をつかれることが少なくなってきた気がする。
それはそれでいいことなのだが、なんだか気味が悪い。
――今日もゆっくり私は寝床で微睡んでいた。
まだまだ寝坊癖は直らない。
何せ目覚まし時計がないのだ。
時間感覚のない私が起きられるはずがないじゃないか。
最初は直そうと努力してみたものの、直しようがなくて早々に諦めた。
大体、佐助さんが起こしに来る時間は決まっているので、布団の中でごろごろしていると、何かにぶつかった。
まだまだ寝ていたいので、瞳は開かない。
横着して反対側に寝返りを打とうとすると、何かに妨げられて寝返りをうつことが出来なかった。
仕方なくゆっくりと目を開けると、布団に添い寝の形で寝そべる佐助さんと眼が合った。
…何しているんだ、コイツ!?
眼が合った瞬間、佐助さんは柔らかに微笑んだ。
「おはよ、名前ちゃん。今日は随分と起きるのが早いじゃない。」
「…あ、おはようございます…じゃなくて、何でいるんですか!?」
「え、あんまりにも気持ちよさそうに寝てたもんだからさ、さぞかし気持ちいいんだろうなと思って。あとは…遅かった時にちょっと名前ちゃんで遊んじまおうかと……。」
「うわぁ…起きました、起きましたよ、佐助さん。だから脇腹を触るのやめてくれませんか!」
私の少ない危機感が働き、瞬時に布団から出て部屋の隅まで避難すると、「ありゃ残念。」と呟きつつ、佐助さんも布団から出てきた。
…やばい、このままだと色々危険な気がする。
ちゃんと早起きする習慣をつけよう。この時ばかりは真面目にそう思った。