――私は車に轢かれたはずだった。

あの日、学校からの帰り道、ボールを追って車道に出た子供を突き飛ばし、轢かれたら一溜まりもなさそうなトラックに轢かれたはずだった。

…不思議なことに痛みがない。

…トラックの目の前に出た記憶はあるのに。

これって…死ぬ感覚なのかなぁ。

ぼんやりとそう呟いていると、いつの間にか周囲の風景は変わった――



 綺麗な花畑に綺麗な小川…まるで天国を思わせるような風景に息を呑んだ。

しばらく歩いていると、白い装束を着た人達が並んでいる。

何となく並ばなきゃと思い、並んでいると私の横を通り過ぎようとして立ち止まった人がいた。

ふと見ると、その人は並んでいる人達とは違って白い装束ではなく、何色とも表現しづらい色の衣を身に纏っていた。

その姿は些か神々しい。


「へぇ…アンタはここの奴等とは毛色が違うみたいだね。面白い。アンタにもう一度やり直す機会をやろうじゃないか。」


…何を言われたのか分からず、その人の顔を見るために見上げると、その瞳は吸い込まれそうな輝きを秘めていた。


「…そのままのアンタじゃすぐこっちに戻って来ちまう。それじゃあ面白くないだろ。俺様がアンタに力をやろう。そうだね…どんな力が良い?人を簡単に殺せる能力、他人を簡単に屈服させる能力…何でも言いな。叶えてやるよ。」

「…人を殺す能力なんて要らない。」


 こんな綺麗なところで不釣り合いなことを言う彼を睨んだ。

そんな私を面白げに彼は見つめてからこう言った――


「面白いじゃないの。人を殺させない能力…アンタに預けてやるよ。せいぜい頑張んな。」



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bkm
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