――何も出来ない私達。

とりあえず身の上をお互い明かすことにした。

…お互いといっても最初は私のことを根掘り葉掘り幼い甲高い声で似合わない口調でもって尋問されたに等しいんだけど。

――苗字名前。高校生という身分を持っていて、ここに至る前は子供を助けて死に、変な花畑で変な人に新しい機会と能力をもらってここに至る。

とりあえず伝えたのはそんなところだ。

全部明かしてもイマイチ信じてはくれなかったけれど、今の状況じゃどうにも出来ない彼は同じように自分の身の上を教えてくれた。

――猿飛佐助。忍隊の長をやっていて、私を殺そうとしたわけは領地を侵してやってきた間者だと思ったから。

それだけを語ると、その他については何も教えてくれなかった。

…自分は根掘り葉掘り聞いたくせになんて奴だ。



 とりあえず武田の屋敷まで行けばいいと彼は言ったので、私は彼を抱えたまま、案内される方向へ歩いていった。

すると抱えられている彼は不服そうに言った。


「…いつまでおれさまをかかえていればきがすむの?」

「…あ、忘れていました。でも、せっかくだからこのままでいましょうよ。子供体温があったかいし気持ちいいんです。それに今の状態じゃ、歩いたらすぐ疲れちゃいますよ、きっと。」

「…おさなごのなかみがおれさまってことわすれちゃいないだろうね。」


 そう言われても猿飛さんのことを正直全然知らないので、私は彼の言葉も構わずによりぎゅっと抱きしめてみた。

「ちょっ!?なにしてんの!?」と焦るような声が聴こえたけれど、気にしない。

やっと目の前に建物が現れ始めたのを見て、ほっとしながら尚も歩みを進めた。





――第一話 「ちいさなさるとびさん」




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