June 2
――学校から出た帰り道の道中、幸村さんは私に今日起こった出来事を事細かに話してくれた。
部活の時に野球部とグラウンド争いをしたこととか、島津先生の国語の授業は面白いが、ザビー先生の英語の授業はちんぷんかんぶんであるとか。
私はそれに適当に相槌を打つ。
ますます幸村さんは嬉しそうに笑い、色々な話を始める。
…なんだか幸村さんを見ていると楽しい。
その様子を私の手を繋ぎながら、何の気なしに見ていた佐助君は少し不貞腐れたように呟いた。
「なーんか俺様、仲間はずれみたい。旦那もいつもより饒舌に話すし、名前ちゃんも楽しそうなもんだからさ。」
…ああ、いつも幸村さんと一緒だから妬いていたのか。
そう私は納得すると、私の手を握っていた佐助さんの手と幸村さんの手を繋がせた。
…うん、なんだかしっくりきた。
何故だろう、この間の「小十佐」の時よりも胸が暖かい気がする。
それに何だろう。少し興奮する。
――「佐幸」…私の胸の内から自動的に出てきた言葉。
この気持ちは何だろう……。
気づくと、幸村さんは固まったように動かず、佐助君は顔を引き攣らせながらこちらを見ていた。
「名前ちゃん…俺様が言いたかったのはこっちのことじゃなかったんだけど。」
「え、そうなんですか。私は何故だかこっちの方がしっくりきます。それに何でだか心が暖かくなるような……。」
「名前ちゃん、そっちの道に走っちゃダメ!!お願いだからやめて!?」
私が思い出しかけた途端、佐助君がすごく必死な形相でそれを止めた。
その拍子に思いっきり強く抱きしめられる。
…どれだけ苦い思い出だったんだろうか。
そんな私達の様子を傍観していた幸村さんは訳の分からないといった顔をしていた。
「一体、2人して何だというのだ……。」
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