May 2
――身体を洗い終えると、かすがと一緒に湯船に浸かる。
温泉というだけあって、露天風呂も完備しているし、何より野球部のお客様が多いためか女性の方のお客さんは少ない。
ゆっくりかすがと浸かっていると、かすがは何か聞きたそうな目で私を見つめていた。
私が促すと、小さな声で話し始める。
「名前、なぜお前は猿飛を誘ったんだ?以前のお前だったら、何としてでも断ろうとしたはずだ。」
「ああ、あれのこと?うーん…友達になったんだしね、少しは歩み寄らなきゃと思ったのもあるし。いざ、関わってみると、前よりは前世に拘らなくてもよくなったってのはあるかなぁ。あ、最近、前世の夢を見てないのもあるかも。」
「…相変わらず名前は奴に甘いな。」
私の話を聞くと、かすがは眉を顰めた。
…「相変わらず」って昔の私も佐助君に甘かったってこと?
時々、かすがはこういう言い方をすることがあるけれど、最初は私にはよく分からなかった。
それでも今では、佐助君や幸村さんの例もあるし、かすがもどこかで仲良くなっていたのかなとも考えるようになった。
もし、前世から親友っていうんなら、すごく大歓迎だ。
私はかすがに笑いかけてみる。
…かすがも笑ってくれた。
やっぱりかすがには笑顔が似合うよ。
「まあ、つかず離れずくらいがちょうどいいのかもしれないよ。それに最初以来、佐助君とは前世云々の話してないし。」
「そうか。名前がそうするというなら、私は何も言わない。」
かすががそう言うと、肩まで湯船に沈む。
その項はほんのり赤くなっていて物凄く色っぽい。
友達にこんなこというのもなんだけど、すごく抱きしめたい。
…耐え切れなくなって、かすがに飛びついたら、すごく顔を赤くして小さくなってしまった。
相変わらずかすがは可愛いな…あれ、なんでだか、かすがと温泉に入るの初めてじゃない気がする。
「ねぇ…かすが。私と昔、お風呂入ったことあるの?」
「いきなりなんだ、そんなこと聞いて。」
「うーん…なんかかすがと一緒にこうやって入るの初めてじゃない気がするんだよね、何故か。もしかして前世でも大親友だったり?」
「…ああ、大親友だ、今でも。」
かすががそう言い切ったことで、私は何だか幸せな気分になった。
…温泉旅行に来てよかった。
素直にそう思った。
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