April 2


――翌朝、私の玄関前にいたのは猿飛君だった。

…家、この辺だったっけ。

呆気にとられている私に猿飛君はにっこり笑った。


「おはよ、名前ちゃん。」

「…おはようございます、猿飛君。」

「佐助。昨日、そう呼べって言ったよね。」


 私が何とか返した挨拶に対して、文句をつける猿飛君。

彼にとって呼び名は大事らしい。

仕方なく「佐助君」に変更すると、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

…そういう表情もできるのか。

何だか昨日から真面目な顔や作ったような表情しか見ていなかったから、珍しい気がした。



 2人で登校すると、校門前で会ったかすがが眉を顰める。


「…お前、名前に何をした。」

「やだな〜、かすが。俺と名前ちゃんはお友達になっただけだって。今日は一緒に登校してるだけ。」

「名前はお前達とは特に仲良くしないって決めていたはずだ。」

「でも、名前ちゃんは俺様と友達になったんだって。ね、名前ちゃん。」

「あ、はい。」


 かすがは訝しげに佐助君を見ると、何も言わずに教室へ向かっていった。







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