――佐助君に呼ばれ食卓に着くと、武田家で頂いたような立派な食事が用意されていた。
「いただきます」の挨拶をしてから食べ始めると…うん、相変わらず美味しい。
なんでお兄ちゃんといい、佐助君といい、女子力の高い男子ばかり周りにいるんだろうか。
自分の女子力のなさに溜息が出る。
そう感じながら食べていると、さっきまでこちらをニコニコしながら見ていた佐助君が一部の料理をタッパーに詰めていく。
私が不思議そうに見ていると、佐助君は苦笑した。
「いや、旦那を待たせてるもんだから、そろそろお暇しようと思ってね。」
「あ、そうなんですか。ありがとうね、佐助君。凄く美味しかったです。」
「お褒めに預かり光栄ですってね。そのはずみで俺様と結婚してみる?」
「はは、冗談がうまいね、佐助君。」
私が苦笑いで佐助君の発言を交わすと、佐助君は「冗談じゃないのにねぇ」と呟いた。
…いや、冗談ってことにしてください。
佐助君は帰る準備を終えると、私の方に向かってきた。
その意図が分からずに呆然としていると、突然佐助君に唇を奪われた。
佐助君は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「これくらいは礼としてもらっておいて罰は当たらないだろ。名前ちゃん、また明日ね。」
先ほどの衝撃からまだ意識が戻らない私の頭を佐助君は撫でてから、家から出て行った。
…ファーストキスだったのに。
先程のキスが頭の中でリフレインされて、再び顔が火照る。
入れ違いで帰ってきたお兄ちゃんに訝しげに睨まれた。
「おい、何があった?」
――お兄ちゃんの問いかけにしばらく答えることが出来ず、私は火照る顔を両手で覆った。
――「6月●日―3」
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