――温泉旅行当日、集合場所に集まった私達はバスに乗って温泉街へ向かった。

休日ということもあって、人が沢山いる。

到着した旅館の入り口に進むと、私達は驚きのあまり、一瞬固まってしまった。


「…野球部の泊まるところってここだったんだ。」

「政宗殿がいらっしゃるのか!?」

「…勘弁してくれよ。というか調査くらいしておくべきだった。」

「…伊達がいるのか。」


 今日泊まる予定の掲示板には「婆娑羅学園野球部」の文字が目に入った。

…お兄ちゃん、確か合宿に行くとか言っていた気はするけれど、ここだったんだ。

幸村さんは政宗さんがここにいることを知って興奮しているし、佐助君は何だか苦い顔をしている。

かすがはどこか警戒したような素振りを見せている。

…仲悪かったかな、そんなに。



 変な雰囲気を醸し出しつつも、今日泊まる部屋へ通される。

ちゃんと部屋も隣同士と言えども分かれているし、お兄ちゃんにばれたとしても問題ない。

…というより、そもそも私はこの旅行のこと、お兄ちゃんに話していなかったな。

いつも口うるさいお兄ちゃんのことだから、このことがばれたら説教コースな気がする。

ふとそんなことを思いつつも、入浴セットを取り出す。

隣ではかすがが何だか難しそうな顔をしている。


「どうしたの、かすが。」

「いや…アイツ等と伊達は仲が悪いからな。面倒事にならないといいと思った。」

「あー…大丈夫でしょ。お兄ちゃんがいるもん。」

「…相変わらず兄に全面の信頼を置いているんだな。(…その兄が自分と前世の繋がりがあることを何故言わない?)」


…かすがが何だか棘のある言い方をした。

あんまりうちのお兄ちゃんのことを良く思っていない口ぶりだった。

文句を言いたくはなったが、せっかくの旅行だし、ここはぐっと我慢して、かすがと先に温泉に入ることを提案した。

すると、すんなりとかすがは私の提案を受け入れ、お風呂セットを持ってくる。

一応、隣の部屋にも伝えておこうと襖を叩いたのだが、返事はない。

…もしかして先に行ったのかな。







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