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第二十一話 「猿飛さんちにて(番外編2)」




――一通り事情を佐助君に説明し終えると、すごく難しそうな表情を佐助君は浮かべた。

そんな佐助君の膝の上にはいつの間にか起きた弁丸様が無邪気に笑っている。

ちなみに弁丸様に関しては、とてもスムーズに現実を受け入れていた。


「おぬしらはだれなのだ?」

「私は名前と申します。こちらは佐助さんです。」

「うむ、弁丸ともうす!名前とさすけか…弁丸のさすけといっしょだな!」


 それはもう現実から目を背けたい一心の佐助君とは対照的に、現実を受け入れ、無邪気に笑う弁丸様。

…本当、子供の柔軟性はすごい。

可愛らしく笑う弁丸様に思わず手を伸ばすと、弁丸様も喜んで私の膝に座る。

…本当に子供は天使だ。


「佐助さん、後の説明はお願いしていいですか?私、弁丸様と一緒に甘味を貰いに行きたいです。ほら、あとは若い2人で…といったようなアレです。」

「…駄目に決まってるでしょ。なに、お見合いの常套句持ち出してんの。いいから、そこに座りなさい。」


…逃げようとしたのを見破られていたか、残念。

私は溜息をつくと、佐助さんの指した場所に座り直す。

向かいが小難しい顔した佐助君なんて、なんか嫌だな。

私が何を言おうかと考え込んでいると、佐助君は口を開いた。


「全く…まさかアンタが俺様だとはね。しかも祝言もして嫁までもらってるなんて、忍び風情が良い御身分だよね。」

「それに関しては俺様も同感。」

「まあ…乱世の時代は終わりましたからね。新しい生き方をしているって考えてください。私も佐助さんに嫁入りするとは思ってなかったですし。大体、全部幸村様と御館様のおかげというか…あ、弁丸様のおかげですよ。」

「弁丸のおかげか!」

「そうです、弁丸様のおかげですよ。あー…凄く可愛い。このまま大きくなればいいのに、マジで。」


 私はそう呟いて、子供特有の柔らかさを楽しみながら弁丸様を抱っこすると、弁丸様はきゃいきゃい笑う。

マジ天使。…もう一度言おう、マジ天使。

弁丸様に抱き付く私を佐助さんと佐助君は白い目で見ている。

…何ですか、その目は。


「…名前ちゃんも大概、無理なこと言うよね。」

「願うだけはいいじゃないですか。佐助さんも小さい頃は可愛いですよ。」

「可愛いってアンタ…そんなの初めて言われた。」

「…そうか。光源氏計画というものが世の中にはあるじゃないか。今の佐助さんじゃなくて、素直に育てればいずれはもっといい男になれますよ、うん。」

「名前ちゃん、今、さり気なく現状の俺様を否定したよね。」

「気のせいですよ、佐助さん。」

「…本当にアンタの嫁なの?」

「…名前ちゃんは元々こういう子なの。」


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