第十六話 「安芸国吉田の郡山城にて」
無事用事も終わり、後は上田のお城まで帰宅するだけとなった私達。
ところが、初っ端から大問題が発生したのである。
――そう、帰りの船がないのだ。
馬にて元来た道を帰る途中、そのことに気付いた私達は一度宿に泊まり、(行きで泊まった宿じゃないところにしてほしいと佐助さんに頼んだ。だって、あんなことがあったところを清掃してもらったりしたのだ。凄く気まずい。)これからの道筋について話し合うことにしたのであった。
「…私のスマホを元親さんに預けておけばよかった。」
「いや、多分同じことになってると思うぜ。鬼の旦那、絶対スマホを分解してると思うし。」
「ああ…ですよね。」
「今まで最終手段として避けてきたわけだけど、毛利の旦那のところを抜けるしかないね、やっぱり。」
佐助さんの出した結論に私は苦笑いをしてみせた。
…だってあの捨て駒の毛利さんだ。
絶対、今までで一番危険な旅になること間違いなしだからだ。
ゲームの中でプレイする時は毛利さんでプレイするのは楽しかったが、実際お会いするのは遠慮したい。
石田さんの時のようにいざという切り札がない以上、直接会うのは物凄く避けたい。
せめて佐助さんの荷物にならないよう…否応なしになるか。
私は明日からの旅に不安を覚えつつ、早々と体を休めるために目を閉じたのだった。
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