第十五話 「谷山の館にて」
――私達の寸劇が終わり、ようやく助け出される島さん。
心なしか顔が疲れているようだ。
何か申し訳ない。
身支度を整えると、島さんは私達に忠告した。
「今から三成様のところに案内すんだけど、さっきの音…三成様の耳に届いたと思うんスよね。今、会うのはお勧めしないというかなんというか…出直してもらうわけには行かないッスかね。」
「…出直す時間はないよ。俺達はまだ上田に帰る時間も必要なんだ。こんなところで道草食ってちゃ、旦那が執務ほっぽり出して迎えにきちまうだろ。」
「ああ、確かに。…なんか幸村さんが恋しくなってきました。」
「名前ちゃんもそう言ってることだし、俺達は早く用事終わらせて帰りたいんだよね。凶王の旦那の具合がどうであれ、通してくんないかな。すぐ噛みついてくるようだったら、悪いけど凶犬の旦那が犠牲になってよ。従者の務めだろ。」
「…あれ、従者ってそんな役目ありましたっけ。…俺、三成様に斬滅されたくないッスよ!」
佐助さんは面倒そうに島さんに面会の許可を取り付けた。
いざとなったら、島さんを盾にするという佐助さんに、島さんは青ざめている。
…佐助さんの言葉がなんだか横暴だ。
そんなことを少し感じつつも、先程抓られた頬がまだ熱を持っているのを思い出し、余計な事は言わないでおこうと私は口を噤んだ。
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