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第十四話 「鶴丸城を経ての谷山の館にて」




――規則正しい馬の足取りに身を揺らされながら、抱き寄せる胸に寄りかかり私は目を閉じる。

今朝のことが響いているのか、身体がだるく重い。

あの後、軽い朝餉を食べてから出発したものの、身体のだるさはとれず、私は半分眠るようになりながらも馬に揺られていたのだった。

せっかく馬に慣れたと思ったのに。

…ふとこんなことになった原因を睨んでみる。

私の顔を見て、佐助さんはへらりと笑った。

って悪びれもなく笑ってやがる。


「…佐助さん、ちゃんと反省してください。」

「いや〜…名前ちゃん、ごめんね。」

「佐助さんのそれは誠意が伝わってこないんですけど。」

「だってあれは不可抗力っていうか……久しぶりに名前ちゃんと一緒だと思ったら、夢にまで名前ちゃんが出てきてさ。もう止まらなくなっちゃって。で、気づいたら本物の名前ちゃんだったってわけ。」

「…忍がそんな深くまで寝入って大丈夫なんですかね。」

「名前ちゃんの前だけだから大丈夫。」


 開き直る佐助さんに、思わず半眼になる。

「途中で気づいたんだけどさ。」とか続けるものだから、さらに腹が立つ。

途中で気づいたのなら、やめて欲しかった。

呆れたような溜息をついて、佐助さんを見るとこちらから顔を逸らし、「…手遅れだったもん。」と言った。

…大の大人が「もん」なんて使うな。

というか可愛く言っても許されないぞ。

依然、佐助さんを睨み返したが…途中で佐助さんも少し顔が赤いのに気が付いた。

本人の言う不可抗力はどうやら本当だったらしい。

…まるでオオカミ少年が何とやら。

私はそれ以上の追及はやめて、再び佐助さんに寄りかかり、目を閉じたのだった。


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