第十三話 「薩摩に向かう道中にて」
――佐助さんが操る馬に揺られ、九州を渡る。
ここまで来ると、私も馬の背に揺られるのは慣れ、(船の方が慣れなかった。正直、船酔いで大変だった。)段々、揺り籠のように思えて眠くなってくる。
佐助さんの温もりに誘われ目を閉じそうになると、佐助さんから起こされる。
何度かの船を漕いでいると、佐助さんは苦笑いをした。
「…もう名前ちゃん、気を緩めすぎだって。さすがに意識がなくなったら、いくら俺様でも支えきれないよ。ほら、もうすぐで宿に着くから起きて。」
「…はい、すみません。あまりにも気持ちよくて眠くなっちゃいました。正直、船の中では寝れませんでしたし。」
「そうだね。名前ちゃん、船旅初めてだったもんね。今日はちゃんとした宿で寝られるよ。」
佐助さんの言葉に私は意識半ばに相槌を打つ。
…相槌を打つと言っても、半分目を閉じたまま唸っているだけだ。
佐助さんに何度も揺り起こされているにも拘らず、私は馬に揺られたまま意識を飛ばしたのだった――
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