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第十二話 「瀬戸内海にて」




――船上にて、長曾我部軍が網を引く。

その網にはたくさんの魚…そして元親さんが引き上げた竿にはデカいカジキマグロがかかっていたのだった。


「どうだい、お前ら。」

「「「アニキーーー!!!」」」


 元親さんはカジキマグロを船上に置くと、長曾我部軍の皆さんの歓声があがる。

その様子を横で私達は見ていた。

…初めて生でまるまる一匹のカジキマグロを見た気がする。

私はそれなりに興奮していたのだが、隣の佐助さんはあまり反応しない。

…そうか、向こうでは切り身として売っていたから分からないか。

佐助さんの耳元でボソッと呟いてみた。


「あれ、うちの世界だったら200〜300万円の価値がありますよ。手取りで言うと、私が1年で稼ぐくらいですかね。」

「…マジ?」


――私の話を聞いて、段々佐助さんの顔がキラキラと輝く。

…彼にとっては現金換算が一番重要だったらしい。

何となくそういうところがオカンっぽい。

私達がキラキラとした顔で見ていると、元親さんは眩しい笑顔を浮かべる。

おお、海の男って感じだ。


「おう、楽しそうだな。お前らも俺達の仲間にならねぇか。歓迎するぜ。」

「いや〜、真田の旦那が待ってるんでね。忍の海賊ってのも悪くはないと思うけど、今回は遠慮しておくよ。」

「そうなんですよ。私達、カジキマグロに興味持ってるだけなんです。」

「…名前ちゃん、「オブラート」って知ってる?」

「佐助さんこそ、私の世界の言葉なのによく知っていましたね。」

「…お前らが何となく失礼なことを言ってる気がするぜ。」

「元親、心配ない。気だけでなく、実際おそらく失礼なことを言われているんだ。問題ない。」


 孫市さんがそう言うと、元親さんはがっくりと項垂れる。

可哀想にと私が呟くと、なぜか佐助さんから白い目で見られた。

…なぜ?


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