番外編〜もしももう一度井戸に落ちたのなら1〜
日ノ本一周の旅から帰って来てしばらくして――今日も長閑な日々を私は過ごしていた。
最近、幸村さんをしっかり仕事に取り組ませることが出来ているらしく、珍しく佐助さんは上機嫌で離れの家まで帰ってきた。
…夏の日差しが暑い。
せっかくだから冷たい水でもとってこようか。
そう思って立ち上がった私は井戸の方へ向かう。
そんな私を視界の端に留めていた佐助さんも何故か焦った様子でいつの間にか隣についてきていた。
「どうしたんですか、佐助さん。」
「いや…なんか嫌な予感がしてさ。」
「嫌な予感?」
「気のせいならいいんだけどね」と引き攣った笑いを浮かべている佐助さん。
…もしかして私が井戸から落ちて帰ってしまうと思ったのだろうか。
そんなつもりもないのに。
仕方なく佐助さんの随行を許したまま井戸の元へ行き、水を溜める。
綱を引こうとした瞬間、何に躓いてしまったのだろうか、私は足を滑らせてしまった。
「名前ちゃん!」
佐助さんに抱かれたまま私達は井戸に落ちていく――とんでもない深さまで落ちたところでやがて意識を失った。
番外編〜もしももう一度井戸に落ちたのなら1〜