お相手は
「ねぇ、沢野さんって処女?」
目の前の男を殴りたくなった一言だった。
「八代くん、それってセクハラ〜」
「沢野さん可哀想でしょ〜」
蔑む様に八代の取り巻きの女達が笑う。
可哀想なんてイチミリも思ってないだろ。
20歳過ぎて処女って可哀想〜みたいな感じなんだろうか。
でも地味女だししょうがないよね〜みたいな感じなんだろうか。
女達もまとめてぶん殴ってやりたくなった。
でも、至って真面目に普段の人懐っこい感じで八代は
「だって沢野さんの事、気になるんだもん。」
しれっと吐く言葉とじっとくる視線に自身の顔が赤くなるのが解り何かがプツリと切れた感じがした時には口に出ていた。
「…ょじょじゃないです…」
「え?」
「処女じゃないです!」
嘘ではない。
中学生の頃に罰ゲームだったのだろう。
同級生の男子達に抑え付けられ…思い出すだけでも吐き気がする。
あまりのショックに自分が汚く思える。
言い終わると恥ずかしくて立ち上がりその場から逃げる様としたら
ぐいっと腕を引っ張られ逃げ出す事ができなかった。
腕を掴んだのは八代。
少し俯き何か怖い雰囲気がした。
「…れ…」
「相手、誰?」
その声はいつもの明るい人懐っこい声では無く、とても低くて暗い声だった。