おいしそう

「あ、それ美味しそう。ちょっと頂戴」

昼飯食ってる時、椎名の定番台詞になりつつある。

「…お前はいつもいつも。コレ購買で買える、あんパンなんだけど。」
俺の母ちゃんは朝が弱くていつも弁当代と500円置かれていて手作り弁当なんてろくに食べた事がない。

「椎名の弁当の方が美味そうじゃん。それ、手作りだろ?」
椎名が手にしているのは俺が持つ菓子パンと違って色鮮やかで本当に『美味そう』な弁当だった。

「え、これ?見た目だけだよ。」
自分の弁当を見て苦々しく笑った。
こっちは作ってくれるだけでも羨ましいってのに。
「高梨のあんパンの方が美味しそう…ね、一口頂戴。」

本気に物欲しそうに目を輝かせてお願いされるそれに、いつも折れてしまう。

「一口だけな。だから椎名の唐揚げくれ。」
「…うん!いいよ!」





本当はこんな偽物の母親面した女の弁当を高梨の口に、胃に、入れて欲しくない。
高梨が汚れてしまう。
イヤだイヤだ。

だから、高梨の食べかけのパンを僕が食べてそれをまた高梨が食べるから少しキレイになった様な気もする。
「ほら、一口だけだぞ。」
「うん。」


それにしても、高梨のパンはいつ食べても美味しいなぁ。
高梨が食べたパンだから特別なんだ。

美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい美味しい

あぁ、美味しい。
…高梨を食べたらもっと美味しいのかな。
高梨を食べたら僕と一つになれるのかな。

「んなに、購買のパン美味いか?」
「うん!高梨がくれたから余計にかな!」

あぁ…でも食べたら、この声聞けない。
触れられなくなる。
それは困るなぁ。


「椎名って変な奴…。」

〔終〕  


戻る






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -