夢なき姫

んな、少女漫画や小説の様にヒロインに都合良く優しくてカッコ良くて運動もできてピンチの時には爽やかに参上して救ってくれる男なんて居る訳ない。

絵本に出てくる王子様やお姫様を冷めた目で見ていた妹の恋愛観は大人になるに連れて、ひん曲がり、ささくれて、何とも言い様のないものに育っていった。

『おねーちゃんは可愛い』
『おとうとは可愛い→カッコイイ』

妹が呪文の様に言われ続けた言葉。
3歳年上の姉は男性の理想像を具現化した存在で身長・体重・スリーサイズ・容姿・性格と全てパーフェクト。
しかも、男女共に愛され妹思いの非を打つ所が無い女性。

年子の弟も小さな頃は女の子とよく間違われる程で勉強もでき、運動も出来た。
性格はどちらかと言えば静かな方で少し冷めた所があるが、女子からは『クールでカッコイイ』と評価され
「弟くんに渡して」とラブレターは、いつも妹経由だった。

光の様な存在の2人に妹は陰日向に生える名もない枯れかかった雑草の如く生きる。

両親からも姉からも、照れながらも弟からも溢れる程の愛情を貰っていたおかげか、見た目が地味で性格も何も極普通の子だったがズダズダの恋愛観は修復が難しい。

『男性不信』その一言に着く。
実の父や弟にすら少し誉められだけで疑心暗鬼になる位に拗らせていた。

小学生の頃はいつも比べられていた。
姉は優しく大好きだかし、弟は何かとフォローしてくれていて耐えられた。

中学生の頃は姉が去った学校では『美人の妹が新入生で来る』と噂になり、
弟が入学すると、お前に似て美人なんだと噂になり、
同じ小学校だった人達からは姉や弟と違って普通だ。と言われながらも他校だった学生達がまたまた〜と、妹を見に来て奴等が絶望した事に絶望した。

高校生入学!勿論、姉とは違う高校に進学した。
高校生デビュー迄は行かなくても、これ以上姉の美貌と比較され日陰に生きる3年間は避けたいと思ったからだ。
女子校に入ろう思ったが私立校の金額を知り、11駅先の公立校を選んだ。

で、今に至るのだが。
私、大橋実子は現在進行形に痴漢というものにあっていた。
電車の座席隣のサラリーマン風なおっさん自身の鞄を私の方に置き盾にされ太股を触られていた。
男性不信をこれ以上こじらせないでくれよ!

身動ぎして何とか逃げようとするが手はなおも動きを止めない。
俯き耐えるしかないのか?嫌々なんとかしなきゃ、かなり際どい所迄手が来ている
気持ち悪い。こんな平凡女子高生触って楽しいのか?おっさん!
満員電車で勢い良く立ち上がる事すら出来ない状況で私は小さく「止めてください…」とおっさんの手を払おうとした瞬間、手を掴まれた。
「ひっ」と思わず声が出る。

気持ち悪い気持ち悪いマジやだ男なんか滅べ最悪だ
イヤな汗が出て気持ちの悪さに思わず発作的に過呼吸の様になり涙が出た。

その時

バシンっとおっさんの鞄が叩かれ私の太股の上で繋がれた手が人目につく状態になった。
「なぁ、その子イヤがってるよね。オジサン痴漢だよなそれ。」

その声は上からしていて、どうやら私の前に立っていた男が助けてくれた様だった。
ずっと俯いてたので気付かなかったが顔を上げると同じ高校の制服を着た男子生徒だった。
しかも背がバリ高く顔立ちもヨロシイ私が一番苦手としているタイプの男。
でも今は助けてくれたので藁にも縋るってこんな状況なのね。
と冷静に思いつつも声が出なく、口から漏れたのは泣き声だった。「うっ…ふぇっ…うぅっ」
恥ずかしくなり唇を思い切り噛む。
「大丈夫か?」ポンと私の頭に乗せられ慰める様に撫でられる手は普通の子なら嬉しいんだろうけど、私には恥ずかしくて不快なものだった。
いや、助けてくれた『人間』なんだから我慢だ我慢。

おっさんは必死に違うやら何かの間違いだとか言い訳をしていたが直ぐに手を離したとはいえ事実、太股に私の手を繋がれていた事を周辺の人達は見た挙げ句
私が余りの気持ち悪さに泣き止まない…止めたくても止まらない様子を見れば逃げようがない。

「オジサン、次の駅で一緒に下りろよ痴漢しといて逃げられるとでも思ってるのか?」
トーンが落ち低い声に私迄ビクつく。
気付けば回りの人達も痴漢行為をしたおっさんと被害者の私と何人かの女性が頬を染めて男子生徒を見ていた。

私は自信で止められない涙に苛立ちながら早くこの時間が過ぎるのを耐えた。

次の駅に着くと男子生徒がおっさんの腕を掴み私にも一緒に下りる様に声を掛けて来たので仕方がなく一緒に下りて駅員さんの方へ歩く2人に着いていった。

おっさんは何とか腕を引き離そうとしていたが、どうやら男子生徒の握力の方が勝っているのか離される事はなかった。
駅員さんの所に行くと男子生徒は何か話し、駅員室迄連れて行かれた。

何て言うか、スムーズな流れに男子生徒はこの状況に慣れてんのかなぁと思いながら色々聴かれ思い出したくない状況説明をポツポツと話す。
駅員さんや警察の人もイヤな事だから話せるだけの所でいいからね。とか言ってたと思う。

と、話してい途中にどうでも良い事、いや、私にはどうでも良くない事に気付き言葉に出てしまう。

「あっ…遅刻だ…1現目始まっちゃう!」
その場にいた人達が『『え!?』』って言うような感じだったが
何も取り柄もない自分だからこそ、唯一誇れるものが欲しいと小学生の頃から無遅刻、無欠席の皆勤賞を取っていたのに
高校生活始まり2ヶ月目にして痴漢のせいで痴漢のせいで…怒りが込み上げ益々男性不信に拍車が掛かりそうだ。

「あ、駅員さん遅延届けと学校に状況の連絡取ってもらっても良いですか?俺たち、橘ノ坂校の生徒で俺は1年5組の琴原悟です。えっと…」
とスラスラ駅員さんに段取り良く話すと私の方に向いた。自己紹介すればいいのか?
つーかやら男子生徒の握力の方が勝っているのか離される事はなかった。
駅員さんの所に行くと男子生徒は何か話し、駅員室迄連れて行かれた。

何て言うか、スムーズな流れに男子生徒はこの状況に慣れてんのかなぁと思いながら色々聴かれ思い出したくない状況説明をポツポツと話す。
駅員さんや警察の人もイヤな事だから話せるだけの所でいいからね。とか言ってたと思う。

と、話してい途中にどうでも良い事、いや、私にはどうでも良くない事に気付き言葉に出てしまう。

「あっ…遅刻だ…1現目始まっちゃう!」
その場にいた人達が『『え!?』』って言うような感じだったが
何も取り柄もない自分だからこそ、唯一誇れるものが欲しいと小学生の頃から無遅刻、無欠席の皆勤賞を取っていたのに
高校生活始まり2ヶ月目にして痴漢のせいで痴漢のせいで…怒りが込み上げ益々男性不信に拍車が掛かりそうだ。

「あ、駅員さん遅延届けと学校に状況の連絡取ってもらっても良いですか?俺たち、橘ノ坂校の生徒で俺は1年5組の琴原悟です。えっと…」
とスラスラ駅員さんに段取り良く話すと私の方に向いた。自己紹介すればいいのか?
つーか、こやつも1年だったのか!よく見れば胸元に1年と表す色が付けられていた。

「ぁ…えと、1年3組の大崎実子です。」
何か段取り良すぎてコイツが仕組んだんじゃねーのか。とか思う位に話しが進んで解放された。
遅延届けを手に持ち、どうやら無遅刻・無欠席は避けられた様だった。

学校へ行く為に電車を待っていると隣の男子生徒が声を掛けてきた。
「大橋って、痴漢遭いやすい?」
いきなりの質問に理解が追いつかなかった為、ポカンと男子生徒の顔を見てしまった。
にしても背高い。顔を見上げる首が疲れるわ。つーかいきなり呼び捨て?まぁ同級生みたいだし…ってぁあ、
「ちっ痴漢なんて産まれて初めて遭いました…。」
さっき行われた、おぞましい行為を思い出してしまい吐き気が出たわ。
様子が変わった私を見て気付いたのか、また男子生徒は私の頭に手を乗せあやす様に撫でられた。
「悪ぃイヤな事思い出させちまったな…ゴメン…」

いや、痴漢したのは捕まったおっさんだし男子生徒は助けてくれたんだから謝る事ないと思うけど。
まだ嫌悪感から来る吐き気はするが、こちらも申し訳なくなった…あ、そうか。

「あの、」
「ん?」
私は少し背伸びして顔を思い切り上げて男子生徒の顔を見た。

「…助けてくれて…ありがとう。」

私なりに『微笑んだ』つもりだけどきっと気持ち悪いもんになってるんだろうなぁ。
と思いながらも、お礼を言ってなかったので感謝を述べた。



妹は気付いていない。
あれだけ否定していた自分がピンチの時に救ってくれてた男が目の前に居る事を。

〔終〕



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