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絶対の信頼をキミにもボクにも

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最寄り駅から15分ほど歩いて進藤のお祖父さんの家に着いた。

「こっちこっち」

「お祖父さんに挨拶を…」

「良いから来いよ」

進藤は玄関を素通りして裏の庭にある大きめの蔵に入っていった。進藤に着いてホコリっぽい階段を上がっていくと、古い碁盤があった。ボクは邪魔しないよう隣に座る。進藤は優しい眼差しで碁盤を撫でていた。

「佐為、分かるかー?コイツ塔矢だぞ。でっかくなっただろ」

碁盤に向かって、墓に報告でもしているかのように話し出す。何故碁盤に向かってなのかはわからないけど、話してくれるのをボクは待つよ。棋士としての将来を投げ出しかけるほどに、秀策絡みの分かりやすい挑発に乗ったり、人前にもかかわらず泣いたり、著名鑑定士と言われる程に、進藤が大切にしている存在。これまで何年も待った。何十分だって何時間だって何日だって待ってやるさ。

「碁会場で二度、お前が打ったあの子どもだぞ?」

ボクと二度、碁会場で打った…それはおそらく最初の二度のことだ。どちらともボクが負けた。ボクの目の前に居たのは確かに進藤だ。でも、前に言った通り、最初の二回は進藤の中に潜む別人だと今でも思っている。
そして、電車で突然、幽霊を信じるかと聞かれた。進藤に非現実的な何かが起こっていたのかもしれない。

「…塔矢」

ふと、進藤が静かに語りだした。

「佐為はな、この碁盤に宿ってた、ユーレイなんだ」

「うん」

「最初は秀策に憑いて、碁を打ってた」

「うん」

「次に、小学生のオレに取り憑いたんだ」

「うん」

「オレは碁なんて興味なかったけど、打ちたいって言うから、碁に関係あるところに行ったりして、そして…」

段々と進藤の声が震えてきている。少し鼻をすすって…進藤は泣いている。あの時のように、静かに。

「お前とであったんだ」

「うん」

「佐為の言うところにオレは石を置いてた。何度もそうしてるうちに…オレもお前みたいに、塔矢先生みたいに、打ちたいって、おもったんだ。それで囲碁部に入って、院生になって、プロになって…。佐為は、神の一手を目指してた。そのために、幽霊になって千年もさ迷って…。そして、いきなり消えたんだ」

御伽噺のような話だけど、進藤を見れば本当の話だとわかる。本当なら、いつもならボクはこんな馬鹿げた話を信じたりしない。けど、ボクも進藤を通じてsaiと打ってきたし、進藤だから、ボクは信じられるんだ。

「信じるよ」

「塔矢…」

赤くなった目を見開いてボクを見上げる進藤。

「ボクはキミを信じる。打ち明けてくれてありがとう」

そう言って微笑んだら、泣きながら進藤は笑った。

「お前に話してよかったよ。信じてくれてありがとな」

進藤の頭をポンポンと撫でる。ガキじゃねーよって少しだけ頬を膨らませた進藤がかわいくてボクは撫でる手を止めなかった。







何かヒカ碁一人称難しい。なれてないからかな?

2014.07.17 21:01


  

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