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わしが少し深く突っ込んだら、李緒は我を失いかけ叫んだ。初めてこの屋敷に入りこの部屋で姫の李緒と対面した時は美しい姿にもかかわらず勇ましく刀で斬りつけてきたというのに、実は内面は脆かった。

今にも泣き出してしまいそうなほど瞳は揺れていて、消えてしまいそうなほど心が弱くて、それを必死に隠そうとしている様子が痛々しくて。


小さくて細い手を引けば簡単に崩れ落ちてきたその身体を抱き寄せた。


目に映る怯えはこれだったのか。だがしかし、他にも理由がありそうだ。でも今は李緒のこの弱さを知れたから良しとする。

それから暫く素っ気ない返事しか返ってこなかったが、話しは聞いているらしく、外に行くぞと誘えば構わないといった返事が返ってきた。
断られなかった事が純粋に嬉しかった。



外に出るためその身体を抱き上げれば軽かった。刀の方が重いかもしれないと思えるほどに。


庭に下りてから畏れを発動させ堂々と門をくぐった。誰にも気づかれず。
なのに李緒は驚いた様子もなく、ただ誰にも気づかれずに堂々と外にでたという事を受け入れていた。訪ねても想像どおり、答えは返ってこなかった。





街に着いたら、不安げに、明かりや賑わいを拒むような表情で顔を背けた。自分に自身が持てないのだろうか。

少し歩くと前方に射的があった。これで少しは惚れさせようと思って金を払い、弾を受け取って何が欲しいのかを聞いた。
それまで興味無さげだった李緒が少しばかり表情を明るくして、透明な石のついた輪を欲しがった。
狙いを定めて放てば一度で手に入った。渡すと不機嫌そうな表情で礼を言ってきた。訪ねてみたら少し怒った風に嬉しいと伝えてきた。
成る程。素直になりきれないようだ。


そのあと屋敷へ返せば、思いもよらなかった言葉が掛けられる。驚き目を見張っていると容赦なく襖で隔てられてしまったが、照れ隠しなのだろうと予測できた。


「ククク…わしも楽しかった」


聞こえるよう声を掛けて、いつもの如くその場を後にする。




李緒は表情が良く変わって、素直な人間だと思ったがその反面、変に素直に慣れない部分があるようじゃ。不機嫌そうに石のついた腕輪を受け取ったくせに始終大事そうに胸元で大事そうに握り締めていた。
帰り道でわしが見て居ないと思っておったのか、石のついた腕輪を見て、本当に嬉しそうにニコリと笑んでおった。そういう表情をしてくれたから取った甲斐はあったというものじゃ。


「さて、次はわしの百鬼夜行の連中にお披露目するか」

ウチの連中が止まっている長屋が見えた頃、そう呟いて速度を上げた。李緒の反応が楽しみじゃな。
想像してつい口端が上がっていて、カラス天狗が訳を聞いてきたが答えなかった。明日の楽しみじゃ!




2013.02.27 15:29



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