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茶屋でぬらりひょんの急所を蹴り上げて三日が経った。この三日間ぬらりひょんが怖くて外出してません。会ったら速攻反撃喰らいそうじゃん。

「ふう…」

体中に染みのある男の子を治癒した。うん、原作で出たあの子。金をもらっている父親の背中に墨を少しだけ零してみた。あのまま仕事に行っちゃったけどどうなるんだろう。

「…満月?」

っぽいな。まん丸お月様。三日月だったら伊達政宗だとか思っちゃうあたり自分の頭は相当やられているなと思う。…あ、そっか。大阪城で淀君ってことは伊達政宗いるじゃん。石田三成もいるんじゃね?

「わお!何たる事!」

でもなあ…今はぬらりひょんで頭がいっぱい。恋愛なんてもうしたくなかったのに。たったアレだけで心を根こそぎ奪われた。畜生。

「……はあ…」

でも、いくら原作通りにぬらりひょんが珱姫を…私を好きになったとしても、気にいったとしても、私は彼を否定はしないけれど、拒もう。私の重い愛情を受けて過ごしていくよりももっと他の良い人とくっついて幸せに生きていって欲しい。そっちの方が幸せになれる。そうなるためには…ああ、ぬらりひょんの肝を守れば良いのか。

「そしたら…きっと」

きっと全てが丸く収まる。だったらそのために動けばいい。

「月夜に憂い顔がこれほど映えるとはのう」

「…っ誰!?」

咄嗟に身を引いて渡されていた護身刀…たぶん祢祢斬丸だと思う。を抜いた。切っ先を向けた先に居たのはぬらりひょんだった。あ、そうか。あくまでも原作沿いなんだ。

「京一番の美女か…」

ちょっとやらしい目つきで見られる。やめんか。

「成る程。噂は誠だったようじゃ」

「っ!?」

気づけばぬらりひょんの顔が目の前にあって…。
お し た お さ れ た 。

「うん?お主もしや…」

「ケダモノ!」

とりあえず祢祢斬丸で斬り付けてみた。するとぬらりひょんの腕から血が流れる。

「ほう…物騒じゃな」

「くっそこの変態が…」

「ずいぶんと口の悪い姫じゃのう…数日前はわしの大事な部分を蹴るし」

「へっ…」

「間近で顔を見るまで分からんかったが」

クククとさも面白そうに笑うぬらりひょん。おい、ざけんなよ…。
まあそのまま血を流させるわけには行かないから一応治癒してみる。

「これは…」

かざした手から淡い光が発せられ、次第にぬらりひょんの傷が癒える。その様子を見たぬらりひょんは目を見開いて私を凝視して来た。

「お主…何者じゃ?」

「神通力をもった人間」

「ほう…そうか」

「帰れ。直に陰陽師が来るぞ」

そう伝えると、ぬらりひょんは目を見張った。そして笑いながら口を開く。

「また来るぞ、珱姫」

「…違う、李緒だ」

「珱姫ではないのか?」

「ああ、私は珱姫だ。だが…私にとっての本当の名は李緒なんだ」

「そうかい…また来るぜ、李緒」

そう言って手を振り姿を消したぬらりひょんを見送ってから私は駆けつけてきた陰陽師に何事もなかったと伝え、休む準備をした。





2013.02.27 09:58



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