. 気が気ではなかった。上からものすごい物音が聞こえるたびに怖くなった。ぬらりひょんは無事だろうか。肝は取られずに済んだだろうか。考えれば考えるほど怖くなる。けれどんらりひょんはきっと無事だ。 「…牛鬼さん」 「姫。どうなさいました」 「私は上に…妖のところへ行く」 「しかし上は…」 牛鬼が言い渋る。そりゃそうだろう。死闘が繰り広げられているのだから。でも私は居ても立っても居られなかった。私に出来るのは傷を癒す事。だから。 「式紙・破軍」 上から小さくそう聞こえた。それなら上る頃にはもう羽衣狐は倒れぬらりひょんが魑魅魍魎の主となっているだろう。私は急いで上へ向かった。 「お待ちください!」 牛鬼が追ってくるけど構わず走った。早く確かめたかった。癒したかった。安心したかった。 よじ登って屋根へ乗った時、ぬらりひょんがこっちを見た。優しい眼差しにたどり着きたくて屋根を走る。早く温もりに触れたかった。 「妖…っ!」 「李緒…」 「怪我は…肝は…」 「無事じゃ」 ほれ、と言ってぬらりひょんは身体を見せてきた。確かに怪我はしているが肝は無事だった。これでぬらりひょんの寿命は縮まらなかった。 「よかっ…無事で、よかった…」 「李緒…!?」 手で顔を覆う。せっかく治まっていた涙がまた溢れ出てきてしまった。安心したからか、それまで堪えていた分まで全て押し寄せて来てしまい、涙が止まる様子はない。慌てて涙を堪えようとしていると、温もりに包まれた。 「…李緒、わしと江戸に来てくれんか」 「え、ど…?」 「そうじゃ。わしと添い遂げるかどうかはまだ答えが出とらんようじゃから待つが…おぬしを手放そうなどとは思っておらんしの」 「…ばか」 「カッカッカ。そんなわしに惚れておるのは誰じゃ」 「もう…後悔しないでよ?」 「李緒…?」 ちょっと驚いた様子のぬらりひょんに、背伸びして触れるだけのキスをする。 「今のは……!」 「降参だよ…一生、言うつもりは無かったんだけど」 ここ最近馴染んだその身体に抱きつく。戸惑ってるらしいぬらりひょんはさっきから何を言ってるか分かんないけど、構わず私は伝えた。 「大好き」 ちなみにその直後、ぬらりひょんが私の名前を呼びながら発情し出したので急所に初めて会った時と同じような蹴りをお見舞いしておきました。 2013.02.27 23:36 「」 |