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何度も立ち上がり何度も羽衣狐の攻撃に伏せ傷を増やしていくぬらりひょんをこれ以上見ている事が出来ない。何故自分は自分が人質に取られる未来を知っていたのに回避しなかったのか。本当に愚かだ。成そうとした変革は何一つ実になっていない。むしろ状況は悪化しているように思う。

「少しはやるのかと思っていたらお前もそこらの凡百の妖と一緒か…。お前はこの尻尾の数が見えるか?わらわも数えてはおらん…わらわの転生した数と同じじゃ」

「あ…妖っ!もうやめて!お前が無茶する姿は見たくない…お願いだから」

涙で目の前が霞む。霞んでいるのに、何故か、ぬらりひょんだけは鮮明に目に映る。ああそんなに血だらけになって…。

「私なんか諦めろ!私ごと貫け!」

「ふざけんな!」

「っ!」


「あんたの事を考えるとな…心が…綻ぶんじゃ…」



ぬらりひょんのその言葉に目を見開く。



「例えるなら金盞枝(えにしだ)。妖怪も人間も分け隔てなく接する博愛精神を持ち…だが決して自画自賛などせず謙遜する控えめな心…そしていつもわしを見る瞳に宿っていた苦しみ…わしからしたらもどかしくもあるがそれ故の優しさが皆を笑顔に変える。あんたが傍におるだけできっとわしのまわりは優しく華やぐ。そんな未来が…見えるんじゃ。」



どうして。どうしてなの?

そこは桜じゃなかったの?



「異つ国では魔女の箒を作った花だという。お主はまるで何もかもを知っている風じゃった。本当にアンタは魔女なのかも知れんな。わしらを導いてくれる…」



違う…私は魔女なんかじゃないよ。



「なのにアンタは辛そうじゃった。いつも何かに怯えておった。それが、わしに惚れているが故のものならわしが無くしてやる。アンタを心から笑わせてやる。あんたを幸せにする。…どうじゃ。目の前にいるわしは。あんたを幸せに出来る男に見えるか?」



見える…見えるよ。もう、十分だよ、ぬらりひょん。



「そろそろ返してもらうぞ、羽衣狐…行くぞ」


一瞬にして、ぬらりひょんの雰囲気が変わった。闇夜に輝く月のような瞳。私の後ろの羽衣狐に一直線に向かって刀を振り下ろす。その刀は弾き飛ばされたものの腰から祢祢斬丸を抜いて、羽衣狐の顔まで切り裂いた。
その反動で羽衣狐の腕から抜け出した私はぬらりひょんに寄り添って治癒をする。

「何年かけて集めたとおもおうとるぅー!!」

天井に穴を開けて抜けていった妖力を羽衣狐は追いかけた。

「李緒!」

「妖…肝に、気をつけて」

「…おう」

ニカッと笑ってぬらりひょんは羽衣狐を追った。祈ろう。ぬらりひょんの無事と勝利を。





2013.02.27 23:15



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