@ あれから校長に軽く挨拶し、曹丕は己の婚約者――甄姫を連れて出て行った。 三成も居る必要がないため、とりあえず二人の後を追い掛ける形で部屋を出る。 後ろ手にドアを閉め、時計を見ると、もうすぐで昼食の時間だった。 だが、残念な事に財布を寮に忘れてしまったため、三成は昼食は無しである。 情けないと内心うなだれたのはまだ記憶に新しい。 そこでふと、顔を上げる。 「三成、昼食はあるか?」 曹丕が三成を見つめていた。 深い意味は無いのだろうが、三成は何故か目を逸らせず。 それどころか、瞬きすら忘れてしまったかのように見惚れていた。 それに気づいたのかそうでないのか。 曹丕は口端を上げていた。 「…我が君」 「どうした?」 甄姫が曹丕の袖を引いた。 「今から用事があります」 「…そうか、気をつけろ」 「はい…」 曹丕の気遣いにうっとりとなりながら、甄姫は三成に軽く微笑んで去って行った。 奇妙な沈黙が降り注ぐ中、先に行動を起こしたのは曹丕。 ほうけていた三成の手を掴み、走り出した。 「っな…」 ようやく我に返った三成は現状がわからずただ困惑するばかり。 一方曹丕は、そんな三成を見ては笑い、気分を良くしていた。 歩き慣れた廊下を駆け抜ける。 頬に当たる風は冷たいのに。 繋がった手は熱を持っている。 しばらくし、曹丕がようやく立ち止まったのは二人が入ってきた入口。 三成が説明を求めるように曹丕を見ると、彼はフッと笑い 「昼食を摂るぞ」 そう言った。 三成はまたしばらく静止した後 「何故俺と?」 真っ先に疑問をぶつけた。 . 戻る |