09 文化祭3

「そんな門のところで話していないで、中入ったら?」

 顔を上げた先には、腕組みをしてあきれたようにこちらを見る兄の姿があった。ただ、一般人にはバレないように変装はしていたが。

「空也」

「母さんなら、すでにステージ前列で見つけたよ。まさか后たちがまだ門前にいるとはおどろきだったかな」

「いや、悪いな空也。この前に少し用事があってさ」

「……はぁ。まぁ、詳しくは聞かないでいるよ。とりあえず中入って。言、来てくれてありがとう。阿部さんも休日まで、后の付き添いありがとうございます」

「楽しみにしてますよ、空也さん」

「空也くん、お気になさらず」

 空也と会う前とは一変した態度をする二人に、后はある意味感心する。空也と挨拶した晴明は、一歩下がりこちらを見る体勢に入っている。

「お前らなぁ……まぁいいか。空也、ライブはいつから始まるんだ?」

「あと一時間ってところかな。俺もそろそろ着替えにい……――――っ、危ない! 后、言!!」

 時計にちらりと目をやった空也が次の瞬間、どこを見ることもなく顔をこわばらせて后と言の手を思い切り引いた。

「えっ、空也!?」

「空也さんっ!! なにを!?」

 后が驚き、言もまた驚きながら殺気を空也に向けたその数秒後。


「「――――っ」」
「后様っ!!」


 先ほどまで二人がいた場所に、空から飛んできたものが落下し爆発した。それを近くで見ていた晴明が思わず声を上げた。
 息をのむ二人に、空也は声をかける。

「二人とも、ケガはしてない?」

「――いや……ない、けど。空也、ありがと」

 后にとっては、空也が今のように助けてくれるのはたびたびあったことだが、言は違う。まるで、未来が分かったかのような空也の行動に問いかける。

「――ありません。……空也さん、今のは、何で――」

 分かったんですか、と尋ねようとした言の口に指を当てて、空也は先を言わせなかった。

「二人とも、ごめんね。今のは、俺の学園の生徒会会計のせいだ。今日“も”実験に失敗したみたいだけど……あとで、きつめに注意するか」

 そう言ってすっと目を細めた空也に、后と言は思わず身震いした。

「空也くん、今のはどうして分かったんですか」

 言の疑問を代わりに言ったのは晴明だった。視線を鋭くして、空也を見ている。

「――どうしてだと、思いますか?」

「――っ、それは私が聞いて」

「后、言、こっちに来て」

 晴明の――そして、身を隠している甘雨たちのも含めて――殺気を浴びながらも空也は平然と彼らに向かい合い、むしろいじわるそうに問いかけで返した。
 さらに追求しようとする晴明を見てクスリと笑った空也は、自分の弟たちの腕を掴んだ。

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