(嘘つきウェザー)



※微甘、ほのぼの





傘なんて、持っている筈がなかった。
天気予報は大きく外れ、突然のどしゃ降り。
びしょ濡れのまま私はメフィスト邸に転がり込んだ。



「これはこれは…、随分と派手に濡れましたね」

「……今日の天気って晴れじゃなかったですっけ……」


迎え入れた家主は馬鹿にしたように私を見た。


「天気予報が必ずしも当たるとは限らん。予報士とて人なのだから間違えることだってある」

「う……」


私はその場に立つことしか出来ないでいた。ソファ―に座ればソファーを汚してしまうことになるし、今になってメフィスト邸に訪れたことを後悔する。馬鹿にされるのも分かっていたのに。


くしゅんっ と、くしゃみが一つ。






「…まったく、いつまでそうして立っているつもりだ?」



「…へ?」


ふわりと柔らかいものが頭を包んだ。それがピンク色の大きめのタオルと言うことに気づくのにそう時間はかからなかった。



「メフィ、ストさん?」

「濡れた体を冷やせば風邪を引くのがわからないのか?」



ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に彼の手は優しく私の髪を拭いてくれる。途端、恥ずかしくなって俯いてしまう。



「なまえ、耳まで真っ赤ですよ」

「………風邪のひき初めです」

「ほう、それは大変だ」




そう言いながら、メフィストさんはいつもみたいにクツクツと笑う。






【確信犯な貴方の優しさを求めた】

(ふあっ…くちゅっ!!)
(私は忠告したぞ)
(……ずびばぜん…)






つい先日、ガチでびしょ濡れ帰宅したときに思いついた。