(悪魔に恋する非日常@)



*メフィスト卿寄りシリーズ
*初対面のお話







10年前のある雨の日の事である。



まだ梅雨の湿気が残る初夏。とある一家で残酷な事件が起きた。両親とまだ6才になったばかりの娘の3人家族。普段なら楽しい食事をとるリビングで母親の切断死体と見るに耐えない形相の父親の刺殺死体が発見された。その二つの死体は幼い娘を囲うように遺棄され、奇跡的に生きていた娘は涙一つ流さず割れた窓から振り込む雨をただただ眺めていたという。







「おっかしぃ〜な〜…、確かにこっちに曲がった筈なのに………」



と、そんな話は昔の話で、一躍時の人としてニュース番組やお昼のワイドショーなんかで騒がれたこともあった(娘(6)みたいに)そんな私も晴れて華の女子高生。今日はその正十字学園入学式。一通り終えた私は一人でふらふら校内見学。そんな最中偶然ピンクの犬を見つけた私はそれを追いかけて雑木に体半分突っ込んだ状態でいたりする。



(どこだ…どこだ、)



ここで一つ余談をしようと思う。私には悪魔が見える…らしい。これは知り合いのおじさんが教えてくれた事だ。まぁ実際、「貴方は悪魔ですか??」って聞いて「はい、悪魔です。That's Right☆」なんて確かめた訳じゃないので定かではない。かと言っておじさんを信じていないわけではない。寧ろ、彼は恩人だ。親を亡くした私を教会で引き取ってくれたのは彼だ。優しく迎え入れ色んな事を教えてくれた。巨乳好きな点は死ねと心の底から思ったこともあったっけ………。




…………………えっと、私は何をしてるんだっけ??あ、そうだ。ピンクの犬……










「ごきげんよう、フロイライン」




…声??後ろから、




「こんな所で、何かお探しかな??」






髪の毛が引っ掛かって痛いが、半身を雑木から出す。髪がボサボサなんて気にならなかった。だって、目の前の人物が奇抜過ぎたから。




「……えっと、どちら様…??」





(――――ああ、この人…)





ニヤリと嫌な笑みを浮かべて目の前のピエロみたいな格好の男は、紳士のような一礼をしてこう言った。




「私は、ヨハン・ファウスト五世。以後お見知り置きを……☆」




(悪魔……、かも…)





私、悪魔に話しかけられた??どうしよう。どうしたら良いの??いつも見かける悪魔は私の事見ると隠れちゃうのに…。

「私は、みょうじ…なまえです」

「宜しく、なまえくん」

「よ、よろしくお願いします」




あ、あ、握手しちゃった!!!!心臓がドキドキしてる。この悪魔かもしれない人は普通にお話しできるんだ。言葉通じるんだ。てか、どうしようっ!!なんだか嬉しい…!!!!



「さて、なまえくん。私の質問に答えて貰おうか」

「あ、えっと…。犬を、探してます」

「……犬??」

「ピンクの犬…、ファウストさんは見てませんかっ??」

「知りませんねぇ」




ピンクの犬なんて、どうでも良くなった。今、目の前のファウストとかって言う名前の悪魔かもしれない人の方が断然興味深い。




「あの……、」

「はい??」




これは一種の渇望だろう。知りたい。目の前の人物を。彼が何者なのか。





「貴方は……、悪魔……ですか??」


「…………………………」





(言っちゃったぁあああああ!!!!)


ファウストさんは目を見開いて固まった。次第に肩を小刻みに震わせる。




「くっ……くく、…ククククク…」




笑っている!?変身か??邪悪な悪魔に変身するのか!?黒い羽根がブワッサァ!!って生えて、角がニュルリ!!って生えて!!!!



「―――――ッぶふぉ!!」

「!!??」

「ぶふっ、あはっ、あはは、あひゃひゃひゃひゃ!!!!!!!」

「―――!!、――!!??」



(わ………、



笑われた――――!!!!!!!)




「あはっ、ははは、いやぁ、こうも立て続けに面白いものに出会えるとは」

「ほ、本気で聞いてるんですから!!」

「くく、バカにした訳じゃありませんよ」



そう言うと、ファウストさんは私の手を取りその場に立たせ、頭についた落ち葉を払う。そして、耳元で囁いた。




「…………メフィスト・フェレス」




「………え??」

「貴女にこの鍵を差し上げます。身近な扉の鍵穴に使いなさい。そうすれば、私の元に繋がります」

「は、はぁ…」

「これは課題です。さっきの言葉の意味を調べておいでなさい」




一歩、二歩、三歩と下がりファウストさんは手に持っていたピンクの傘を振り上げた。




「それではなまえくん!!貴女が再び私の前に現れるのを楽しみにしていますよ」

「え、あの…っ!!」

「アインス☆ツヴァイ☆ドライ!!!!」




-ぽんっ!!!!!!!






(………嘘、でしょ??)







モクモクと立ち込める白煙。突如として姿を消したヨハン・ファウスト五世。ピエロのような紳士のような姿の男。


彼は魔術師か何かなんだろうか??それに、ファウストさんが言った『メフィスト・フェレス』ってなんだろう??渡されたこの鍵はなんだろう??結局私は彼の事が知りたいと思いながら短時間では満足できる情報は得られなかった。私は知りたい。ファウストさんをもっと知りたい。




(めふぃすとふぇれす……、)




そうだ。図書館に行こう。きっと悪魔に関係があるに違いない。調べて、また彼に会いに行こう。この不思議な鍵を使って!!





「どうしよう。ワクワクしてきた!!」





そう言うと、満面の笑みを浮かべたなまえはその場を走り去った。









【 あくま が あらわれた!! 】



(ああ、なんて今日は素敵な日なんだろう)
(燐兄と雪兄に会いに行くのは後回しだな)
(ごめんね、二人ともっ)



Fin.




今のところシリーズ予定です。
どっぷり恋愛にはならないかな。
恋するとか言っちゃてるけど←

-補足
Fr(a)ulein (独語)
フロイライン/お嬢さん