(スローリータイム)



※雰囲気
※名前変換なし







うーん、うーん、って机に雑誌を開いて鏡を目の前に置いて唸っていたら「なにしとんねん」って勝呂くんが声をかけてきた。


開いた雑誌のページはヘアアレンジ特集の所で、私は編み込みをしたいけど上手く出来ないことを伝えた。



「下手くそやなァ」
「だって、難しいんだもん」
「そんなでもないやろ」
「んー、もう諦めよっかなぁ…」


はーぁと、態とらしくため息をついて机に突っ伏す。
一人で格闘して馬鹿らしい。


「…ちょいそれ貸してみ」
「コーム?ほい」


それ、と指差したクリーム色のコームを手渡すと普通に座るように背中を叩いて促された。
何が始まるのかと思ったら勝呂くんはコームで私の髪を綺麗に梳かしだした。


「え、勝呂くんできるの?」
「試しにやってみるだけや。これの通りやればええんやろ?」
「うん」


髪の束をゆっくり、丁寧に編んでいく勝呂くん。一つ一つの動きがとてもゆっくりに感じて、なんだか変に緊張してしまう。それでも、ゆるく引っ張られる感覚が少し心地がいい。
「痛ないか?」だって。
全然。勝呂くんの不器用な優しさみたいなのを感じてぽかぽかする。

なんだか、私と勝呂くんだけの教室が、特別な空間に思えてきた。


「ふふ、」
「なんや急に」
「んー、ないしょ!」


こんな些細なことで気持ちが溢れてにやけちゃったなんて、




【恥ずかしくって、言えないよ】


(背中越しの君にはきっと)
(にやけた顔は)
(見えていないはずだから)




少しスランプに陥りそうな感じ。
まずいぞー。