(奴はとんでもない物を盗んでいきました。)



※勢いなんです。
※名前変換無し
※St Valentine夢












フられた。

ちょっと気になっていた隣のクラスの男の子。バレンタインにチョコを渡して告白なんて、なんてベタな事したんだろう。それはもうキッパリとフられた。暴走した乙女心は木っ端微塵に砕け散ったのです。


泣くとか、そんなことにはならなくて。むしろ、涙一滴滲んで来なくて。なんだか、気持ちが空回りしたみたいな、そんなモヤモヤとした感じだけが残ってしまった。


「んー、これ…、あんまり美味しくないかも」


あまり人の通らない学園の外階段の踊り場。放課後特有の部活動に励む声とか、バラバラに練習する楽器の不協和音とか。そんな空間にぽつりと一人で呟いて、本当に好きだったのかもわからない彼の為に作ったトリュフチョコを一粒、自分の口に放り込んだ。丁寧に包んだラッピングは乱暴に開けて。


「やっぱり、あげなくて正解だったかも…」

「美味しそうですね」

「いやいや、ちょっと甘過ぎたみたいでねぇー」


え?

どこからともなく現れた、私以外の誰かの声に顔を上げた。すると、踊り場の手すりにあろうことか人が立っていた。緑の髪に、黄色いネクタイと黒いコートを風になびかせた少年は指を咥えて私のことをじぃっと見つめていた。

制服着てないからまずうちの生徒じゃない。てか、そんなとこ立って危なくない?てか、いつからいたの?てか、コートぼろぼろ。てか、髪の毛とんがってる…。てか、なに私、普通に会話してんの?!

沢山の聞きたいことと、沢山のツッコミどころを持ったその少年は「しゅたっ」なんて可愛く自分自身で効果音を添えて私のすぐ目の前に着地した。


「甘いのは好きです」

「は、はぁ…」

「貴女からは甘い匂いがします」

「チョコ、食べたから…かな?」


くんくん、と匂いを嗅ぎながら私との距離を詰めてくる。私はというと、少年の、くりっとした黄緑色の綺麗な瞳から目を離せずにいた。

気づいたら少年は鼻と鼻がくっつきそうな程まで近づいていた。そして、「ああ」と呟くと私の視界からほんの一瞬姿を消した。突然のことに反射的に目をぎゅっと瞑ると唇の少し左端をぬるりと暖かい何かが触れた。背中がぞわりとして再び目を開けると、黄緑色の目の少年が満足そうにしていた。表情はさっきとあまり変わっていないのだが、なんとなく、そんな感じがした。


「甘くて美味しいです」


ぼんって、音がするんじゃないかって程、顔の温度が急上昇した。


【ーーーそれは、貴女の心です】

(な、な、なに、して…っ)
(その残りも食べてもいいですか?)
(へ、は、はいっ!どぞ!)




降りてきたんです。
ネタが。
勢いで書いたから、gdgdだぜ。