(Your Taste)



※St Valentine夢







「なんで、私が食べなきゃいけな…」
「いいから」


食べなきゃいけないんですか。そう言いたかったのに唇に押し付けられたトリュフチョコレートに言葉を飲み込むしかなかった。

上品にラッピングケースに並べたチョコも、あと1つになってしまった。メフィストの為に作ったのに。それなのに彼は最初の一粒を美味しいと言って食べたきり、「なまえも一緒に」なんて言って私にばかり食べさせてくる。


「本当は不味かったんでしょう?正直に言ってくれていいですから。んっ」
「最初に言ったはずだが?美味しい、と」


最後の一つ。
私の口に放り込む。


(メフィストに食べて欲しくて作ったのに…)


これでは意味がないじゃないか。



「そんな顔をするな」
「どんな顔ですか」
「今にも泣いてしまいそうだ」
「誰のせいです」



そんな会話の中で最後の一つは私の口の中で溶けて、喉の奥へと流れていった。あーあ、なんてことだ。


「なまえ…」
「うむっ…、そんな、キスでご機嫌取りなんてしないでください」
「ククッ」
「……っ」


口角を、釣り上げて、歪んだ笑みを浮かべる。これはメフィストが良からぬことを考えているサイン。ひやりとした嫌な予感が全身を駆け巡った。その間にも私の身体は今まで隣り合って座っていたふかふかなソファの上に押し倒された。

沈む私の身体。押さえつけて、跨るのは、メフィスト自身。


「ンンッ」


噛み付くようなキス。紳士らしさのカケラもない。まさに悪魔。開かれた隙間から無遠慮に舌が割り込んでくる。くるしい。


「クク、甘いな」
「はっ…、なに、が」
「思った通り、チョコレートの味がするな」
「なっ…」
「私にはこっちの方が幾分も美味しく感じるぞ?」


ば、


馬鹿じゃないですか。その為だけに私に残りのチョコレート全部食べさせたっていうんですか。そう言いたいのに、再び塞がれた唇からは私の情けない声が漏れ出すだけ。厭らしく動く彼の舌は私の歯列をなぞり、上顎を執拗に攻め立てる。私が弱いのを知ってるから。悔しい。悔しいけど、気持ちがいい。ああ、頭がくらくらしてきた。


「さて、私はこのままチョコレートの味をしたなまえを全て頂こうと思うのだが…」
「はっ…はぁ、…さいてーです」


組み敷く彼を力なく睨みつける。酸欠か、それとも彼に魅了されてしまったからか、痺れたような思考回路。まるで、もやがかかってるみたい。


「そんな、とろけた顔をされると堪らないな」
「してない、です」
「どれ、身体中をピンクのリボンで飾ってみようか?」
「この、へんたいっ」





【今日は美味しいチョコの味!】

(こんなことになるなんて…っ)
(来年は身体中にチョコを塗りたくるのもいいですね)
(全面的に拒否します!)




イベントには遅れて登場します←
裏にしようか悩んだんですがねぇ