(Sleeping Beauty) ※甘め ※メフィ→ヒロイン 「どーなつ、たべたい…」 なんて色気のない寝言なんだ。 と そう、思わざるをえなかった。 「まったく。寝るなら家に帰りなさい」 そう言ったとしても、目の前のソファで眠るなまえには聞こえてなんかいないだろう。 自然と出る溜息。 なまえに留守番を頼んで出たのが2時間程前のこと。 留守を頼んだことは初めてではないが、眠ってしまっているのは初めてだ。 しばらく眺めて、まだ幼さの残る寝顔に不覚にもときめいていると、「ふ、にゅう…、メ…フィスト…しゃん…」なんて宛ら萌アニメのような寝言を言うものだから少しばかり(いや、多分それなりに)期待していると、あろう事か冒頭のセリフを吐いたのだ。 脱力もする。 悶々と晴れぬ気持ちのまま、ぱちんと指を鳴らして外行きのコートを脱ぐ。 ちらりとソファに目をやり、二度目の溜息。 そして、もう一度指を鳴らす。 ぱちん。 ふわふわと柔らかいメフィストピンクの毛布がどこからともなく私の腕に降りてくる。 「ほら、風邪をひきますよ?」 当然、聞こえてなどいないだろう。 そっと寝ているなまえに毛布を掛ければ、彼女の表情が少しほころんだような気がした。 幸せそうに眠る彼女。 顔にかかる前髪を優しく避けてやる。 さらさらと柔らかい髪に、自然と指を通す。 (無防備にも程があるな) 理事長室とはいえ、仮にも男のいる部屋で。 しかも、悪魔で、自分のことを気に入って傍に置いている奴の部屋で。 こうも簡単に寝るか、普通。 これで私のいない間にアマイモンが来たらどうするつもりだったんですかねぇ。 奴のことだ。 「わーい」とかなんとか言って襲いかかるに決まってる。 奴には紳士的な振る舞いが足りない。 「………はぁ…」 本日、三度目の溜息。 少し荒んだ心を落ち着かせ、再びなまえに目をやる。 「まったく、貴女は。もう少し警戒心を持ちなさい」 言って、軽い力で額を小突く。 「んん”…」と声が漏れる。 相変わらず色気がない。 それでもなぜか笑みが零れるのは、私がなまえを愛しているからだろう。 抱擁や、口づけ、この甘ったるい感覚も悪くはない。 なまえの額に自分の唇を落とす。 起こさぬように、優しく。 近づけば強く香るなまえのにおいはあたたかく、落ち着く香り。 「もうしばらく、夢の中にいるといい…」 愛しい愛しい眠り姫。 【とっておきのドーナツを用意してやろう】 (そろそろ2時間だ…) (…………………………ぐぅ…) |