短編小説 | ナノ
今日も校舎裏に咲く桜の大木は美しい。
コバルトブルーに染まった空、白い曇。そしてあの桜の木の下で、最近よく見かける彼女。
まさに完璧や、エクスタシーや。
彼は心の中でそう呟く。

桜の大木の幹に寄りかかって、1人本を読んでいるその後ろ姿は、ミステリアスで、けれどどこか優しいオーラを漂わせている。彼女を覆う木の影と隙間からあふれでる木漏れ日が、彼女を表しているよう。


今日も白石蔵ノ介は昼練へと向かう途中に、そんな絵画ような景色をみる為にわざわざ校舎裏のこの道を通って部室へ行く。



そういえば今日で7日目やんなぁ。
一体何の本読みよるんやろか。
あの景色、写真とって額におさめたいなぁ。
ここを通るときは彼女のことばかり。
そんなことを部室につくギリギリまで考えている白石は、この学校では「聖書」という異名の名の下、完璧を追及した男と呼ばれている。






「今日もめっちゃええ天気やなあ」

「白石最近そればっかりやん〜」

「んもう蔵リン最近また男前度あがったわねぇ〜」

「浮気か!しなすど!」

「なんや白石、新種の健康グッズでもみかけたんかいな」

「謙也さんはよ着替えてくれませんかね、浪速のスピードスターほざきよるくせに遅いっすわ」





部員達の声が耳に入るとテニスモードに切り替わる彼。しかし日を重ねるにつれ、練習中にも彼女のことが浮かぶようになっていた。

ロブを打たれたときに見上げるコバルトブルーの空。白い曇。
コートに散らつく桜の花びら。
このテニスコートにも残像が、いや、同じ景色が映っているという事実に、つい笑みをこぼす。





「ん、ほんまいい天気や」


「なんや白石、金ちゃんの言うてたとおりやな」






しかしながら確実にスマッシュを決める白石。むしろ威力もコントロールもあがっているのではないかと言うくらいだった。

そして10分前のチャイムがなり、部員達がコートを後にすれば、部室の鍵を手にまたあの道へ向かう。
さすがに帰り道は彼女の姿はもうそこにはないのだが、何故か気になって今日もこの道を通る。

花びらが視界を横切り、桜の木へと視線をうつした時だった。






「…!」






そこには彼女と思われる女性徒が、横たわってすやすやと寝息をたてている姿があった。今まで後ろ姿しか見たことのない白石は顔をしかめたが、頭の上にあった本と長い髪で彼女だと確定した。




おそるおそる近づく彼。
それもそのはず、あと少しで五時限目は始まってしまう。けれどもだからと言って騒然としながら起こすのも気がひけたのだ。
こんなに彼女に近づいたのは初めてで、予想外の展開に鼓動が高鳴る。何よりも、初めてみた彼女の正面からの姿に、見とれてしまっていた。自分の気持ちを悟った白石は、優しく微笑み彼女の髪に手を伸ばす。

長い睫毛に透き通る様な白い肌。
今までみてきたあの絵の主人公に、俺は今触れている。


さぁ一体どんな言葉で彼女を目覚めさせようか。白石蔵ノ介は自分が完璧と呼ばれていることも忘れ、夢中でおはようの代わりの言葉を探している。














朝ですよ、お姫様




(ん…あれ?あなたは…)
(白石蔵ノ介言います。)
(…あ!授業…!!!!)















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白石くんにこんなキザな言葉をいわせてみたい。お姫様って。
何気に高校生設定だったり
というかこのサイト自体がほぼ高校生設定だったり

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