03
帰り道はお互い家の場所やルールの話なんかをして、俺は名字ん家に帰ってきた。
名字の真似はなんとなくコツは掴んだが、さすがに家の中の名字まで演じられるかどうか…
なんて思っとったら、名字からメールがきた。
03
『他にもわからないことがあったら聞くこと!…あと、あたしの体に変なことしないでね』
するか。ちゅうかもう風呂入っとるし。
なんて思いながら無愛想に返事をしといた。
ドライヤーで髪を乾かしながら俺はあいつの顔をまじまじとみていた。
そしたら
(なんじゃ、あいつも口もとにホクロあるんか)
口もとにあるホクロをがしがしと人差し指でいじりながら、俺はドライヤーを元の場所に戻した。
「おはようさん」
「仁王!!昨日はどうだった!?」
午前7時45分。歩道で猫背の俺をみつけて声をかけた。 なんかやっぱ自分が二人おるみたいで気持ち悪い。
いや、でもこんな必死に昨日の家での話をきこうとするこいつは、決して俺なんかじゃないことを忘れたらいかん。
「…頼むからもう少し冷静な俺になってくれんかの」
「…ぷ、プリィ」
俺のプリッはそんなんじゃなか。
「あ、てか私が仁王といるのって周りからみたらおかしいよね?」
「俺があきらめて更生中ってことにしとけ。それにお前さん一人でおったら厄介なことになりかねんしの」
「まぁ確かに…あ!それで!!!」
それから俺は昨日あったことを話した。
まぁ変なことはなかったけど。
俺が話し終わると名字は淡々と 仁王の家も私の家と同じで奔放主義だね なんて言ってた。頼むから俺の前で"私"連発するのやめろ。明日酷いことやらかそうか。
そう思ってちらっと名字を見た時だった。
(なんじゃ…ホクロがなくなっとる…?)
名字の身長が低いせいか、俺が顔をみたらちょうど口元が目に入り、そこにあったはずのホクロがないことに気づく。
「仁王どうした?」
「なんでもなか。」
俺はもしかしたらこのホクロが原因なのか、と思いながらも、ホクロを元にもどす方法なんか知らんわけで。
とりあえず、俺はどうやったら元に戻れるかを頭の中で考えていた。
(やっぱもう一度あの階段から落ちるしかないんじゃか)
隣では俺らしくない俺が、次の風紀委員の会議はいつでー なんて言うとるうちに、昇降口について俺たちは別れた。
「ちょっと」
「?」
ちょうど階段をのぼろうとした時に、派手目の女から声をかけられた。
「あんた、調子のんじゃないわよ」
「…」
女はそれだけ言うと取り巻きのやつらと笑いながら先に階段を上っていった。
確かあの女は… 最近毎回部活終わりに、タオルとスポーツドリンク持ってくるやつやったはず。
名字、あいつにも 校則違反だ! なんて言って追いかけまわしよったんじゃろか。
それにしても 俺の前と名字の前では 180℃違う態度で少し吐き気がした。