00 ことのなりゆきは



「こらー仁王!!!いいかげんその髪どうにかしなさい!!!」


今日も朝っぱらからゆれてる銀の尻尾。

隠れ問題児なあいつをとっつかまえる為、私は駆け抜けます。













00、銀のしっぽを捕まえろ!













「…朝っぱらからえらい張り切っとるのう」

「今日は絶対つかまえてやる!!!」
"ターゲット、仁王雅治、発見"
ちょうど正門を通りすぎた時、私の中の追跡システムが作動した。
現在時刻午前8時、目まぐるしい人混みを一気に切り裂くように私は逃げる仁王めがけて駆け出した…。

そう、私は校内違反をとりしまる風紀委員なのである!!







「…プリッ」

「あともうちょっとであのしっぽに…」




ことの始まりは3日前だ。
中間試験前休みに入った私達三年生に先生達は、いつも以上に校則違反者のとりしまりを強化させた。
私達三年生は大学受験があるから、書類にも色々書かれちゃうわけで…。
これから受験までの間、私達風紀委員にもその命は課せられたわけなのである。
とまあそれはおいといて…




第1ターゲット仁王雅治!!!
手早く捕まえてさっさと更生させちゃおうじゃないか!!



私はさらに人混みを押しきっていく。
そしてその人混みが味方したのか、
昇降口前は人だかりでつまって仁王の足止めをしてくれていた。






「…つかまえ、たっ!」


そして私はいよいよ目の前でゆれる銀髪に手をのばす。




(よっしゃ!!!)




そう私が心の中で小さくガッツポーズを決めたときだ。掴んだはずのそれは、しっぽではなくなんと…





「ご、、ゴム!?って…!!」




なんと私が手にしたのは、あの銀の尻尾をつくりだしているゴムだった。



そして、絶体絶命。

勢いよく駆けた足を突然止めたせいで、私の体は前のめりになってしまった。スローモーションのように時がながれていく。
そして目の前に広がるアスファルトに御対面した時だった。



(ああああああ!!!!!)
















――――トサッ







「残念、惜しかったのう」






(え)











今頃顔面がいたくて鼻血まみれのはずのあたしが、宙にういている。
否、正しく浮いているのではなく肩が…









「って!!!!」


「大丈夫か?」





仁王だった。
それから仁王は私をかつぎ上げ、自分だけ靴を履き替えて校内へとあがっていく。


「…ちょ!降ろして!!私靴履き替えてないしっ、自分で歩けるー!」

「…お前さん今降ろしたらすぐ履き替えてまた追いかけてくるじゃろ。」

「…う」



なんだか形勢が逆転している。
そして周りの視線(とくに女性徒)が痛いぃぃいっ!!
そういえば確か、私のクラスの女が仁王くんかっこいいー!!!って噂してるの思い出した。
ってそんなことはどうでもよくて…
そんな私の気もしれず仁王はずかずかと階段をあがっていった。





「ここまで来たら大丈夫じゃろ。」

「ちょ!あたし土足なのに!!」







それから仁王は私を降ろしてそういった。こんなとこ先生にみつかったら恥ずかしいったらありゃしない!
しかも仁王め、あたしを屋上前の階段上までつれてきやがった。


「あー、そういやもうそろそろチャイム鳴る頃じゃけえ」

仁王はそう言ってそそくさとのぼってきた階段を降りていく。
くそー、仁王おぼえてろっ
なんて思っていたら、








―――――キンコーンカーン…



チャイムが鳴った。
やばいこれ遅刻扱い!!
風紀委員とあろうものがこんな失態を…
そう思ってダッシュで階段を降りたようとした時だった。







ずかっ






「へ?」





ふわり、体が宙にうかぶ。
あれわたし、また転んだの?




ああやっぱり、またこれだ。
スローモーションで時間がながれていく。仁王のあの鮮やかな銀髪が朝日に照らされてまぶしい。
この高さだったら、
私、死ぬか?










「仁王!!!あぶなっ…」

とっさに私は先行く仁王の背中に、そう叫ぶ。


が、











「なっ…」"間に合わない"
あたしはそう悟り、仁王が振り返った瞬間だった。














ドサッ





















「……いたたっ…」

「っ…派手にいったのう」







背中が痛い。そうか私はさっき階段でこけて…あぁ、思い切り仁王と頭をぶつけたのか。
ってことは今あたしは仁王におおいかぶさって…



ってアレ…?おきあがろうとした私の背中がいたい。
目をあけたら天井。
そして何故か私の胸にはびっくりした顔をした私がいる。







…一体これはどういうことなのだろう。










「…もしかして…」

「あー…まさか」













こんなことあるわけないけど、
目の前にあたしがいてあたしは仁王になっていて。
そしたらもう、誰だってこう思うはず。














「…入れ替わった?!?!」



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