05



午前10時、駅前にてあたしを発見。
それにしてもなんだよあいつ。
私が私のときよりおしゃれじゃないか。














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「お前さん、スカート全然もっとらんのう」

「だって私ズボン派だし。制服はあきらめてるけど。」

「今名字は俺じゃけ、ズボンじゃろ」

「まあ確かに。ってか、仁王はスカートはいてて気持ちわるくなんないの?」




そんな会話をしながら私たちは近くのカフェへと入った。ドリンクの注文を済ませて、さっそく本題にはいる。





「病院、どうじゃった」

「強くは打ってたみたいだけど、安静にしてれば大丈夫だってさ。」

「まあ、とりあえず怪我を治すことが先ぜよ」





おまたせしましたー。

店員が注文した品を持ってくる。
ここの店来るの早いじゃん、なんて思いながら私達はドリンクを片手に話を続けた。




「ねえ思うんだけどさ」

「なんじゃ、言ってみんしゃい。」

「…やっぱ入れ替わったことって仲いい人にも言っちゃだめなのかな…」

「例えば?」

「ほら、仁王だったら柳生くんとか!私も彼となら話せるし、私たち二人のお友達だし…」

「あー、柳生か。ちゅうかまず誰かが信じるとでも思っとんか」

「…え…それは…」



仁王のその一言に、私は顎に手を当てて考えた。…確かに、突然入れ替わったの私たち、なんて言われたら、まず信じないだろう。でもあの真面目な柳生くんのことだから、ちょっとはまともに考えてくれるんじゃないかな、とも思った。



「あと、俺が日頃から詐欺師なことはあいつがよー知っちょる。、俺が関わっとる時点で、希望はなか」

「…まぁ確かに…私から言っても入れ替わった相手が仁王くんじゃ、信じてもらえないかも…」



じゃあ人に話す方向はなしで、
あたしが頷きながらそういうと、仁王は眉を潜めてなにやら考えだした。



「そういえばお前さん入れ替わる前、自分の口元にほくろなんかあったか?」

「ほ、ほくろ?なかったけど」

「あー、やっぱそうか。」

「え、どういうこと?」

「…よう見てみんしゃい。お前の口元、ほくろがあるんじゃよ。」

「ほうほう」

「んで、俺の口元。」



そう言って仁王はポケットから鏡をとりだして私の顔の前に差し出した。



「…?」

「俺は口元にほくろがあったんじゃき。…これ、どういう意味かもうわかるよな?」



私は鏡をジィっとみつめた。
私の口元になかったはずのホクロがあって、仁王の口元にあったはずのホクロがない…
えっと、もちろん入れ替わってからの話だよね…?そう私が一人で悩んでいると、ようやくひとつの答えに行き着いた。




「ホクロも、入れ替わってる!」

「ぴんぽん」

「え、ってことは、このホクロが重要な意味を表してるんじゃ…」

「俺もそう考えた。ほーてもそっから先が全然浮かびあがらんくてのう」





確かにホクロも一緒に入れ替わったことに気づいたからといって、解決方法に直結するわけじゃない。むしろさらに私たちの謎を深めていく。





「…とりあえず、痛みがひいてからも様子みてから判断しよう、階段から飛びおりるのは。」

「飛びおりるのは俺なんじゃがな。」




結局、今の私たちの希望は、もう一度あの場所でおなじことをする、という方法だけだった。とりあえず痛みがなくなるまでの間、余計な心配はせずに、今やれることをやろう。 そう思って私は一気にドリンクを飲み干し、二人で店を後にした。












「そこまで!、回答用紙前にまわせー」




あれからあっというまに3日がすぎ、無事試験が終わった。
苦手な数学もそこそこ解けたと思う。(日曜日カフェから出たあと、やることなくて図書館で仁王が教えてくれたし。)
結局あれから私たちは、普通を装って生活を続けた。 以前に比べたら、やっと少しは慣れてきたけど、まだ、あたしには大変に気がかりなことがもうひとつあるのだった。


それは…


「仁王くん、名字さんが呼んでるよー!」

「んあ?」



そんなことを考えていたら、教室のドアの前には名字…じゃなくて心は仁王のあたしがたっていた。



「すまん、お前さんに言うてないことがあった」



それから仁王の方に近づくと耳元で小さくそう言われた。
たぶん、今あたしが不安になってる要因と同じに違いない。場所が場所なので、人通りのすくないベランダに出て私たちは話しを続ける。




「奇遇だね。わたしも、あるわけだ。しかもかなり大変なこと」

「あーたぶん、お前さんとおなじじゃ」













「…試験終わったし…今日からテニス部、始まるよね…?」











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