虎の威を借るめぐる・上



 弥一。眉一つ動かさないような凛々しい顔でわたしを脇に抱え込んだ男。小学二年生、お昼休みのときだったーー。


「これはいける」


 その場にいたみなが目を丸くする。見ず知らずの男子に、なにゆえめぐるは抱えられてしまったのか、その時はなにもわからなかった。ただ小生意気だっためぐるは、その出来事を介して、これまた小生意気な策略を作ろうとしていたのだ。


「やいち。いや、あさばし(氏のことである)。よき友となろうではないか」


 それを見た先生が「うわ、いけすかねえ」と思ったのも仕方のないことだろうと察する程度には、めぐるの笑みはこの上なく胡散臭く、そしてゴマをする商人と化していた。


「俺もそれを言いにきた」


 弥一もほとほと阿呆なやつである。



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