トリップ 番外編@ | ナノ
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▼ 女中エピソード



女中のバイト中、休憩中を沖田くんと過ごすお話



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休憩中あまり人が通らなそうな縁側に腰を下ろし頂いたお団子を食べる。

和風なお家に入ったこと無いからテレビとか本で見ただけだった縁側。お日様が当たってポカポカ暖かい。
洗濯物直ぐ乾きそうだな、後で見に行ってみよう。

そう考えながら残りのお団子を食べていると外から沖田くんが近付いてきた。

「休憩中ですかィ?」

「うん、沖田くんは?これから見廻り?」

「今見廻りから帰って来たんでさァ。」

「そっか!お疲れ様。お茶入れてこようか?」

「いや、」

断りの言葉を述べた沖田くんは縁側に上がり隣までやってきた。

「一口下せェ」

「はい、どうぞ」

口元まで差し出したお団子をパクリと口に含みもぐもぐと動かしている。

やっぱり可愛い顔してる。女の子顔負けだよね。

そんな事を考えていると思わずじっと見つめすぎたみたいで、沖田くんのか顔が近付いてきた。


え、と思った時には至近距離まで来ていて頬に唇の感触。


「なんで?」

「スゲェ見てるから。ちゅーして欲しいのかと思いやして。」

「そうゆう訳では無かった。ごめんね、見すぎだね、」

「どーぞ好きなだけ。特別にタダで良いですぜ」

「ふふっ、じゃあ遠慮なく。」


身体ごと沖田くんに向けるように座り直すと胡座を掻いたまま沖田くんも私に身体を向けてくれた。


目がまん丸でパッチリしてる、まだ未成年だからか頬がほんの少しだけ丸みがある感じでまだ骨張ってない。それがまた可愛さを引き立てるんだろうなぁ。でも今からこんなに可愛いんだから成人したらますます男前になりそう。アイドル的な?


頬辺りをじっと見ていると手を握られ引かれた。
何だろうと思いながらも膝で立ち近付くと、胡座を崩して両膝を立てた沖田くんの足の間に収まる感じになる。


掴まれたままの手を口元に持っていき手の平に唇を押し当てている沖田くん。


唇を当てたまま目線を私に向けてきた。意味が全く分からない。何がしたいのかも分からない。


黙って観察しているとゆっくり唇が離された。


「何してるの?」

「触りたくなりやして」


手の平を?しかも唇で?


「……そうなんだ。」

疑問しかないけど、取り敢えず納得しておいた。


すると今度は掴んだ手首はそのままで反対の手で私の頬を触り額に唇を寄せた。



いやいやいや、おかしいよね?
え?今どきの若い子はこんな感じなの?


ゆっくり額から離れた唇。元々近い距離に居る沖田くんが更に至近距離で目が合った。
頬の手はそのままで真っ直ぐ見つめて再度顔を近付けてくる。

唇同士が触れる寸前の所で肩に手を置いて止めた。押した訳ではない、本気じゃないのは分かっていたから。


「残念、もう少しだったのに。」

「嘘、本気でする気は無かったでしょ?」

「まぁ今回は。でも次は本気でしやすからね。別にヤりてぇ訳じゃねぇんで、勘違いはしないで下せェよ。ただ触れたいだけでさァ。」



……ん?ちょっと意味が分からない。どうゆう事?


「スキンシップって思って下せェ。」

「……スキンシップ……」

「こうやって手を触るのも、頬触るのも、抱き締めるのもスキンシップ。その延長って事でさァ。」

「その延長……」

「俺に触られるの嫌ですかィ?」

「触られるのは、嫌じゃないよ? 」

「なら、ちゅーされるのは?」

「え、それ普通する?スキンシップで普通するの?」

「頬っぺにちゅーは?」

「頬っぺぇ? は、まぁ別に何とも。」

「額は?」

「別に。」

「でも唇は駄目なんで?」


……そう言われると、良く分からなくなる。
だって唇って意味ありげでは? 頬っぺたと一緒なの?
まぁ、顔の一部か。唇はされたことないしとか思ったけど、頬も無かったや。額もか。あれ? こだわる場所でもないのか?



「ちょっとくっ付くだけですぜ。深くしたりしやせんよ」

「えぇ? そうゆう問題?」

「ご希望ならしやすけど」

「いや、何も希望してない。」



してないって言ってるのに両頬に手の平を当て上を向かされて固定された。
ぐっと近付き拳1つ分くらいあけて止まる


「目ェ瞑って下せェ」

「いや瞑んないから!しないよ!? 」

「なんで?」

「何で!? な、……え、沖田くんは普通に誰とでも出来ちゃう感じなの?」

「する訳ねェだろィ。アンタだから触れてェんでさァ。」

「え、あ、ありがとう?」


そしてゆっくり距離を詰めていく沖田くん。


え、本気で?唇と頬は同等な感じで捉えた方が良いの?犬猫と同じ感じなの? ……そんな訳ないよね?違うと思う。うん、違うわ。

止めようと逸らしていた視線を沖田くんに向けると、ぐいっと一気に距離を縮められた。


「はい、アウト―。甘いでさァ。もっとちゃんと抵抗しなせェ。」


頬に手の平を当てたまま、親指を私の唇の上に乗せそこへ顔をギリギリまで近付けて言ってきた。


「こんな手添えてるだけじゃ止めて貰えねぇですぜ。」


私は頬にある沖田くんの手首をずっと掴んでいた。別に添えていた訳ではない。寧ろ引き剥がそうと力入れてたくらいだし。



「怒りやした?」

「いや、怒らないけど。一体何がしたいの?」

「アンタに触りてぇだけ」



それは何となく分かってる。沖田くんはただ単純に温もりを求めて触れてきてるような感じがある。悪戯心も加わってるだろうけど。でも逆に私が弱ってるときは温もりを与えるように触れてくる。だから沖田くんが触れてきても抵抗はしない。それに嫌だとも思わないし。


でも今回のこれは何だろう。口は流石に駄目じゃない? あ、本気でする気は無かったか、私の抵抗が少なかったから?


「沖田くんじゃなかったら、もっと抵抗したよ。」

「そうじゃなきゃ困りまさァ。恐怖植え付けて無意識にでも抵抗出来るようにしねェとならなくなる。」



はい? 今とんでもなく物騒な言葉が聞こえきたんだけど。



「……」

「まぁ、俺がやるまでもなく旦那がやりやすかね」


そう言いながらまだ痣の消えていない喉元に触れた。



確かに。これはこわかった。気を付けようと心底思った。



「……ドSの方だからなの?言う事もやる事も物騒だよね」

もう少しソフトに出来ないの?


「得意分野なもんで。名前さんが気を付けてくれりゃ、俺は可愛い俺でいやすよ。」

「……例えどんな沖田くんでも、私にとってはそれが沖田くんだよ。」


例えば恐怖というものを与えてくるとすれば、それはきっと私の為。



「……甘ェでさァ。」


言いながら抱き付いてくる身体を私も背中に腕を回して抱きついた。


「そんな甘ェと間違えて口ぶつかるかもしんねぇですぜ」

「それは困ったね。」

「もっと本気で困りなせェ」

「真っ赤な口紅でも塗っておこうかな」

「は?準備万端で?」

「いや違うよ、口紅べったりの唇嫌でしょ?」

「あ−」

「グロスたっぷりでも良いかも」

「良くねぇ。アンタ馬鹿ですかィ?」

「え? グロスたっぷりは大丈夫なの?」

「そうじゃねぇ、口紅でもグロスでも人によるんでさァ。」

「あぁ、そっか。でも沖田くんは嫌いでしょ?」

「いやだから、人によるってそうゆう意味じゃねぇ、相手次第。」

「相手? 」

「しつこくしてくる奴が出来たら試してみなせェ」

「えぇ?私にしたいと思う人なんて居るかなぁ」

「そうゆう油断は危ねぇですぜ」

「うわぁ!本当だ、今の無しね。油断駄目なんだった。噛まれる。」

「旦那の調教もまだまだですねィ。」

「え、なにそれ。」


抱き付きながら交わす会話。

この後土方さんが呆れながらやって来た。



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