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▼ 始まりの朝

若干の苦しさを感じ目が覚めた
しかも何か暑いし
喉も渇いたから起きて水でも飲みに行こうと薄く目を開けると、すぐ目の前が肌色で埋め尽くされていた

何だろ?

明らかにいつもの景色じゃない
ボーとしながら肌色を辿って上をみると

……人?……え、人……?
え?何これ、こんな人間みたいな抱き枕、私持ってた??
ちょっと、落ち着け自分、何だこれ

取り敢えず落ち着け自分と言い聞かせ
顔をゆっくり正面に戻して目を瞑った

夢だ、うん、夢
寝惚けてるんだよね、まだ起きてなかったんだよね、何か凄い心臓バクバク言ってる、凄いリアル、凄い現実みたいな夢だった
はい、起きるよ、目開けるからね

…………

肌色だ
何も変わってない

そろ、と上を見るとやっぱり変わってない
銀髪の男の人が眠っている
目の前にある肌色はこの銀髪の人の胸元な訳で
しかも腰にある重みはきっとこの人の腕

未だ夢じゃないかと手の甲に爪を立ててみたけど普通に痛い

何、誰この人
どうやって家に入ったの?

心臓が尋常じゃなくバクバクしてる
そりゃそうだ、だって1人で寝てたのに起きたら目の前に人が居るんだから
しかも独り暮らしだよ私
鍵もチェーンも閉めた記憶はある

もう完全に目は覚めた
さっきまで暑かったのは、この人の体温が移ったからだろう
でも今は暑い所か寧ろ寒い
背筋に冷や汗ってこの事なんだなと頭に過ったと同時に逃げなきゃと思った

夢じゃない、なら逃げなきゃ
この人が起きる前に

「っ!」

逃げようとゆっくり後ろに下がったら、目の前の人が動き出した
さっきまで全く動かなかったのに……!
腰の上にあった腕が背中に周り抱き寄せられる
さっきまでも十分近かった距離がもう0になり完全に密着状態

恐怖で体が動かない
てかヤバい、ちょっと上手く呼吸出来なくなってきたし

ん"−と唸り声が上から聞こえてきて、あ、起きたなと浅く呼吸を繰り返しながら思ったら
上から え?……え、え?嘘でしょ? って

いや、こっちのセリフ
何でこの人が動揺してんの、不法侵入者だよね?

冷たくなった自分の手を握りしめ、あっ夢か!と、さっきの自分と同じ事を言ってる人の方に、ゆっくり顔を上げた

丁度その人も顔下げた所らしくバッチリ紅い目と合わさった

しん、と時が止まったかの様に静まり返った部屋

そこに響き渡ったのは

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

男の人の叫び声



耳が潰れるかと思う絶叫に顔をしかめてしまう
こんな間近で人の叫び声を聞いたの初めてだ

不法侵入者だよね?
何でそっちがびっくりしたみたいな顔してるの

青い顔をしてこちらを見ている銀髪の人をみて、さっきまでの恐怖が少し落ち着いてきた
叫びながらも後退して布団から出てくれたので、自由に動けるようになった体を起こし上半身だけ起き上がった

そこでようやく私は気付いた。

……え、てか待って、……どこ?
ここどこ?

不法侵入と思ってたら、違う、ここ私の部屋じゃない

落ち着いたはずの心臓がまたバクバク鳴り出した

え、待って待ってどういう事?
誘拐なの?不法侵入じゃなくて誘拐されたの?
いや、でもあの人凄い汗掻いてるし、顔青いし
……
銀髪って染めてるんだよね?
生え際黒くないけど染めたてとかだよね?
目、紅いけどカラコンだよね?
カラコンして寝てたんだよね?

さっきまで不法侵入のことで頭回らなかったけど、冷静に考えると何かおかしい

ここは私の部屋じゃない
誘拐されたとして、何でした人が焦ってるの?
銀髪、紅い目って日本人……じゃない?
でも日本語、そもそも紅い目の人って居るっけ

何これ、どうなってるの
自分の置かれている状態が全然分からない
ここは、どこ?

頭の中でぐるぐる考えていると

「……あの−、聞いてます−?」

銀髪の人が私に話し掛けていた


「え、あ、はい、何……ですか」

どの位考えていたのか、いつの間にか銀髪の人は布団から遠ざかったその場所で、胡座を掻いてこちらを見ていた

何度も話し掛けていたらしい
全然聞いてなかった

「だから、俺昨日飲んで無いんだよね。だからちゃんと記憶あるわけ、確実に1人で寝たからね。何、おたく不法侵入者?」

真っ直ぐ目を見てそう聞かれた

不法侵入……って私が!?

「……いや、あなたが誘拐したんじゃ?」

「はぁ?何で俺が誘拐すんだよ!だから昨日は酒飲んでねぇって言ってんだろ!?」

飲んでても誘拐しねぇけどな!多分、と付け加えて言ってきた

誘拐してない?
なら何で私はここに居るの

「……ここは、どこです?」

「どこって、俺んちですけど−? 万屋屋銀ちゃんの家、んでここは俺の部屋」

呆れた顔して自分の家だと言う銀髪の人の言う事が正しければ、不法侵入者は私、になる。

何でか分からないけど私が勝手にこの人の家に入ってきちゃったの?
まさか夢遊病?今まで1度も無いけども。

ど、どうしよう。
でもほんとに私が不法侵入したのなら悪いのは私じゃん

「あ、の、えっと、す、すみません、よく分からないんですけど、私が、不法侵入しちゃったんですよね……?すみません、」

動揺し過ぎてどもってしまった
不法侵入とか謝って許して貰えるものなのかな……
記憶無いけども


「……いや、まぁなんつーか、俺も抱き付いちゃってたみたいだし 、おあいこって事で。」

いっすかねぇ? と銀髪の人が不法侵入を通報しないでくれるみたいでほっとした

良かった、なら早く帰ろう

「ありがとうございます、じゃ帰りますね、」

本当にすみませんでした、と再度謝って布団に入ったままだった足を抜き立ち上がった

は!? と銀髪の人が叫んだので、後日改めて謝罪しに来ますと伝えると、そうじゃねぇ!!と更に叫ばれた

「いやいやいや!なんつー格好で人の布団侵入してくれてんだよ!! やたら温かけぇなと思ったら、つか脚絡ましときゃ良かった、って違げぇ!!!!今のナシ!!冗談だから!俺やってねぇからぁぁぁ!!!!」

立ち上がって必死にやってないと首を降りながら叫んでる

まぁ、人に見られると恥ずかしい格好ではある
ウサギの耳が付いた真っ白のモコモコのパーカーに下は同じくモコモコのショーパン
私には似合わない可愛すぎる代物だ
でも独り暮らしで着てるんだから別に良いだろうと買った物

引かれたかな……
いい歳してウサミミ付きのパーカーとか
でもこのウサミミめっちゃ気持ちいいんだよ!
長めの垂れ下がる耳触ってると癒されるんだよ!

居たたまれなくなって、もう1度、帰りますね と言葉を残し部屋を出た

しかし銀髪の人は付いてくる

「いや、待てって!!その格好で外出るつもりか!? って耳付いてんじゃねぇかぁぁぁ!そのパーカー!!
兎かよ!ウサミミかよ!尻尾は!?付いてねぇの!?」

ウサミミに今気付いたらしくまた叫んでる
何だ、耳にドン引かれたのかと思ったけど違ったのか

尻尾もありますってパーカーの裾を少し捲って見せながら玄関を探す
マジかぁぁぁぁ!と尻尾を凝視しながら付いて来るが、玄関を発見しそのまま向かうと、靴がない

私裸足で来たのか
まぁ良いや

裸足で玄関に降り扉に手をかけた所で銀髪さんに扉を掴まれて止められた

「だから待てっつってんだろ―が!! 聞いてんのか俺の話を!!」

「聞いてますよ、尻尾見せたじゃないですか。」

「いや見たけどよ!ありがとうございます!! そうじゃなくて、その格好で外出んなっつってんだよ!」

何故かお礼を言われた
この人さっきから叫んでばっかだな

「そう言われましても、この格好で来てしまったみたいですし、」

恥ずかしいけど走れば大丈夫だろう
そんな遠くでも無いだろうし

このまま帰りますと、3回目の帰ります宣言をし手を伸ばしたままの扉をひくが押さえられてて動かない

「あの、離して下さい。」

「だぁ―もう!分かったっての!! ならせめて送るわ、流石に1人で帰すとか危ねぇしよ 」

兎なんて一瞬で食われんだろとかブツブツ言いながら扉から手を離し、着替えるから待ってろ、と部屋に戻って行った

「え、いや大丈夫ですって!」

慌てて背中に声をかけると振り返って眉間に皺を寄せられた

いやもう何なの、本当に早く帰りたいんだってば!

「つーか、家どこな訳? ここの近所?引っ越して来たばっかとか?」

「え?いや2年は住んでますよ、きっと近くなんだと思います」

見たことねぇけどなと言いながらマジマジとみられ居心地悪くて顔を反らした

確かに私も見たことない
銀髪なんて目立ちそうなのに近所で聞いたこともないな

いやそんな事より、取り敢えず

「帰ります」

4回目の宣言と共に今度こそ扉を開け外に出た
後ろから、待てって捕食されるから!と叫んでいるが、もう無視で良いや

明るい光を浴び、天気良いなと空を見上げると

良く分からない何かが沢山浮いている
と言うか……

ここ、どこ?


本日何回目の衝撃

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