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Clap




【林檎】




林檎を貰ったと袋に山盛り抱えて帰宅した後、暫く台所に籠ってから漸く居間に戻って来た手にも林檎、そして包丁が持たれている。

沢山あるから色んなの作れるね、と楽しそうに笑いながら林檎を向く隣にソファーから下りて座れば、今しがた早速下準備をして来たそうだ。
綺麗に剥かれた林檎を皿に乗せ俺に渡してから、フォークを忘れたと立ち上がり台所に消えてる間に手で食う事も出来るが、折角取りに行ってくれてんのにどうかとも思い2つ目の林檎を代わりに剥いていれば直ぐに戻って来る。


「あ、剥いてくれてる。ありがとう。」

「おー。すげぇ沢山貰ったんだな。」

「そうなの、お登勢さんにもお裾分けしたのにまだ沢山あるんだよ。てかねぇ本当にもう銀さん好き、兎さんの林檎じゃない、私皮全部剥いちゃったよ。」


隣に座り俺の手元を見るなり軽く息を吸って声が既に喜んでるし、見える筈の無い花が飛んで来てるように思える程嬉しそうだ。

剥いた林檎を1つ持ち隣を見ればじっと見られてる兎の林檎、ゆっくり跳び跳ねる動き付きで口元に向かわせると声を上げて喜び身体まで揺れてるし、もう幼児と化してるわ。


「はい、あーん。」

「あー、んっ!……んー、っ美味しい!」


手元に半分残った兎の胴体を自分で食えば確かに旨い、甘い林檎だ。持って来てくれたフォークを剥いてくれた方の林檎に刺し食おうとすると視界に入るのは俺が剥いた林檎。それがこっちに向かって跳んで来てる。

ピョンピョンと効果音を口で言いながら俺の元まで来た林檎は唇にちょんと触れ、ちゅ、とこれも効果音付きで俺は兎の林檎にキスされたらしい。


「ふふ、」

「キスしちゃったじゃん、これ浮気に入んの?」

「私よりこの子の方が好きになっちゃった?」

「こいつスゲェ甘ぇかんなァ、噛んでも怒んねぇで甘い汁出してくれちゃうくらい健気だし。」

「銀さんには聞こえないの? ほら今も泣いてるよ、痛いよぅ、食べられちゃったよぅって。」

「自分から食われに来たんだろ」

「それとこれとは別なんですよ。ほんと美味しいねぇ、すり林檎も食べよう。」


また立ち上がり台所から持って来た新たな林檎とおろし器。
すりおろし林檎なんざ食う事無ぇな、ただおろすだけなんだから腹に入れば同じだろそれ。


「わぁ、綺麗な色、美味しいそうだねっ!半分こしよ?」


同じな筈なのにすりおろした林檎を喜んで皿に移してる姿を見てたら何故かすげぇ旨そうに見えて来るから不思議だ。
スプーンと一緒に笑顔で渡された皿を受け取り、横目で食ってる顔を見ながら すりおろしただけの林檎を食えば旨かった。普通に食うのとは全然違ったわ、腹に入れば同じでも食感も大事に決まってる。歯応えは無いが甘い林檎の果汁がそのまま食える、100パーセントの林檎の果汁じゃん、しかも果実入り。せっせとすりおろしてくれたのに一瞬で飲み干しちまった、スゲェ旨い。


「うめぇなこれ。」

「ね!美味しー、これでゼリー作ったら美味しそうだねぇ。」

「あー、旨そう。」

「銀さんのアップルパイも食べたいなっ。」

「え? あぁ、作る?」

「やったぁ! じゃ台所行こっ」

「今日食うの? けど材料無くね?」

「大丈夫、買って来ました。」


テーブルにあった食器を手に持ち偉くご機嫌に立ち上がる表情は勿論笑顔で、しかも買って来たってか。食べたいなとか言っておいて最初から作って貰う気満々だったんだろ、断られないの分かってて聞いたんか。

これ口元緩むのどうしたら良いんだよ俺は、何で林檎1つでんな楽しそうなわけ? それ見てる俺まで何でこんな気持ちになるんだか。
ニコニコと効果音が聞こえて来そうなくらい笑顔を向けられて「行こう?」なんざ誘われりゃ行く以外に選択肢は無ェけどよ、何つーか、平和だな。


「銀さんのアップルパイ美味しいよねぇ、楽しみー。」

「お前おだてんの上手ぇなァ? 」

「おだててないよ? 本心で言ってるの。もうねぇ、お店のアップルパイ見ても食べたいと思わなくなったんだよ、でも見ると銀さんのアップルパイ食べたくなって来るけどね。」


台所に立てば自分は違う作業をしながらも絶賛して来るもんだから飾り切りした林檎を添えてやった。軽くジャンプして喜ぶ姿に笑いを堪えるのは無理だったが、そうも嬉しそうな顔を見せられるとまた作ってやりたくなるからこいつはホントに狡ィやつだよ。
















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